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「効率を求められる今こそ、時代遅れと言われる哲学が重要」……東京大准教授の哲学者が語る懐疑論

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「懐疑論」古田徹也さん

武藤要撮影
武藤要撮影

 懐疑論とは、何が本当に正しいのか、そもそも真実は存在するのかといったことを疑う立場のことだという。

 古代ギリシャ語の原語で、「懐疑」には考察や吟味、観察という意味がある。「哲学の歴史はある意味で懐疑とともにある。そもそも疑うことなしに哲学はありえない」と重要性を語る。

 本書はヨーロッパの哲学の歴史の中で、懐疑論がどのように登場し、どんな役割を果たしてきたかを丁寧にひもとく。古代ギリシャのピュロンをはじめとして展開した懐疑主義と、デカルトらによる近代以降に影響力を持った懐疑論とを対比して論じている。

 インターネット上でのフェイクニュースの拡散が問題になっている昨今、真実への疑いが増し、陰謀論など真実を巡る社会の分断につながっていると指摘する。「近代以降の懐疑論はこうした真実への焦りを増大させる」という。

 一方で、古代の懐疑主義は「何かを区別し、分断しようとする境界線を曖昧にする議論になっている」とも指摘する。「真実を振りかざしてぶつけ合うのではなく、それを鎮めて治療する営みだった」と現代的な意義を見いだした。

 1979年、熊本県生まれ。大学の授業をきっかけに哲学に触れ、研究者の道へ進んだ。現在、東大准教授を務める。

 「ウィトゲンシュタインの言葉で『哲学者同士のあいさつはどうぞごゆっくりであるべきだろう』とあるように、じっくり、ゆっくりと考える営みに魅力と開放感があった」

 社会の現状には、「効率を求められ、性急さに駆り立てられるような今こそ、時代遅れと言われてきた哲学が重要になっている」と実感を語る。

 趣味は晩酌。「お酒博愛主義ですが、日本酒が一番多い」と話し、かつて勤務していた新潟のお酒を愛飲しているという。(中公新書、1078円)北村真

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