【映画評】「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」…革新の映画、いまや信頼のシリーズに

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 「アバター」シリーズの第3作にして最新作、上映時間3時間17分の「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」(12月19日公開)には、このシリーズならではのお楽しみが詰まっている。資金と英知をたっぷり投入したであろう壮大かつ高密度な映像、次々と繰り出される多彩にしてダイナミックなバトルシーンに加え、自然に対する人間の所業を思わず省みたくなるストーリー。前2作ほどの目新しさはないけれど、観客を物語世界にきっちり引きずり込む。(編集委員 恩田泰子)

映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」=12月19日日米同時劇場公開  © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved. 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」=12月19日日米同時劇場公開  © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved. 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

 3作目に触れる前に、少しおさらいをしておこう。

 シリーズの舞台は22世紀、巨大ガス惑星ポリフェマスの5番目の衛星、パンドラ。大きさも環境も見た目も地球に似たその星では、人間によく似た姿かたちの青い肌の知的な生命体ナヴィが、森や海などにさまざまな部族を形成。美しい自然、神秘的な生物と調和しながら生きてきた。だが、地球からやってきた資源開発会社RDAがパンドラを破壊し始めたのを機に、ナヴィは過酷な戦いを余儀なくされる。

 アバターは、パンドラの大気に適応できない人間が作り出した存在だ。人間である操縦者は、自分自身とナヴィのDNAを融合させた二つ目の体=アバターを、自分の脳と同調させて遠隔操作する仕組み。今やナヴィ、森の民であるオマティカヤ族を率いるジェイク・サリー(サム・ワーシントン)は、もともとは操縦者だったが、侵略者である地球人ではなく、ナヴィのために戦うことを選び、アバターと自分の魂を一体化させる。

 この戦いの後、ナヴィとして新たな生を受けたジェイク・サリーは、女性戦士ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と家庭を築き、子供たちともども、神聖な森で平和に暮らしていた。が、地球人の脅威が再び迫ってくる。死んだはずの宿敵、RDA社の傭兵クオリッチ(スティーヴン・ラング)は、新技術によって生まれたハイブリッド戦士となって再来し、サリー一家と暮らしていた人間の少年スパイダー(ジャック・チャンピオン)が我が子だと知る。ジェイク・サリー一家は、海の部族メトカイナ族のコミュニティーに身を寄せるが、戦闘は激化。森に続き、美しい海の楽園が戦場と化す。

 ふう……。第2部までの流れは、だいぶ端折っても、こんな感じ。ややこしいが、大ヒットしたから既にたくさんの人が設定を理解しているはず。そのアドバンテージがあるのは強い。

映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」 © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」 © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 たとえ、忘れてしまっていても、あるいは、前2作を見ていなくても大丈夫。普段は疎遠な親類縁者の集まりに出た時、誰が誰だかわからなくても、しばらく周囲のやりとりを聞いているうちに様子がわかってくるような感じが、第3作の前半にはある。実際、この最新作では、家族それぞれの心の機微が重要な要素となってくる。これまでの戦いの爪痕、喪失の苦しみがもたらした負の感情の行方が描き込まれていく。

 舞台は、第2作の戦いから数週間後、戦いの渦中で長男ネテヤムを失ったジェイク・サリー一家は、重く沈んでいる。妻ネイティリは人間への憎しみを募らせ、スパイダーを見る目を変える。そもそも、彼がいる限り、クオリッチはまたやって来て、メトカイナの皆さんに迷惑をかけてしまう……。というわけで、一家は、スパイダーをオマティカヤ族の拠点に送り届けることにする。

 風に乗って旅をする遊牧民トラリム族に同行しての空の旅。そこを急襲してくるのが、アッシュ族。火山の噴火によって故郷をなくしたこの部族は、パンドラの調和をつかさどる超自然的存在エイワを憎んでいる。災厄をもたらしたのはエイワで、そのエイワを信じるほかのナヴィもみんな敵だと思っている。

 アッシュ族を率いるヴァラン(ウーナ・チャップリン)は強烈な女ヴィラン(悪役)で、暗黒のカルトリーダーのような気配をまとっている。暗い炎のような彼女の描き方がもう少し複雑であれば、この第3作の個性はきわだっただろう。

映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」 © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」 © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 だが、キャメロンはそうはせず、この映画をどちらかと言えば総花的に料理している。どうすれば、みな、負の感情にけりをつけて、前を向いて生きられるようになるのかを、主要登場人物全員を照らし出しながら、広くあまねく探究する。ただのバトルムービーではなく、家族の叙事詩的映画であることをはっきりと明示する。シリーズの新しい扉を開く前に、現時点での総決算を行った、という印象だ。

 ただし、クライマックスに向けて緊迫感とダイナミズムと感動を盛り上げていく手腕はさすが。巨大生物の活躍にも興奮させられる。映画に身を任せて「没入」すれば、存分に楽しめる、信頼の「アバター」シリーズ……。

 2009年の第1作「アバター」の3D映像と世界観は、それまでにない奥行きで観客の没入を誘い大ヒット、上映環境のデジタル化を加速させた。今や、その頃に感じた、つくりものっぽさに対する違和感も薄れた。慣れたということもあるのだが、それだけではない。丁寧なモーションキャプチャーで、俳優の表情、筋肉の動きを、 精緻せいち に取り込んで作り上げられたCGキャラクターは、昨今のスペクタクル映画においては最高に人間くさく感じられる部類と言えるものになった。

 映画が担ってきたエンターテインメントの領域がどんどんストリーミングサービスに取って代わられ、人間とAIの主従関係の行方があやしく感じられる昨今。革新の映画「アバター」に始まったシリーズは、映画と人間の従来の関係を守る上でも重要な役割を果たすようになった。こんなにも豪勢で酔狂なシリーズがいつまでスクリーンで見られるのだろうか。そう思うと、ちょっと見る目が甘くなってしまうところがある。

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