[週刊エンタメ]日本文芸家協会 創立100周年は文士劇…稽古に熱 村山スカーレット堂々の役者ぶり 辛酸さん控えめ返上、強気の演技
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日本文芸家協会(林真理子理事長)の創立100周年を記念した文士劇「風と共に去りぬ」が、23、24日に東京・新宿の紀伊国屋ホールで上演される。人気作家が俳優として舞台に立つ催しで、その源流は明治時代に遡る。出演者たちは執筆活動の合間を縫い、本番を目指して稽古に励んでいる。(浅川貴道)

4月上旬、文芸春秋ビル(東京都千代田区)内にある日本文芸家協会の一室を訪れると、稽古が始まろうとしていた。この日集まったのは、約20人の出演者のうち15人程度。皆、名のある作家、文筆家だ。

お祭り的な催しなので、主人公スカーレット・オハラとレット・バトラーは、劇中で演じる人が交代するという趣向。この日の稽古には、4人のスカーレット役のうち、辛酸なめ子さん、村山由佳さんが参加した。演出は、2023年に読売演劇大賞の最優秀演出家賞を受賞した五戸真理枝さんだ。
体操で体をほぐしてから、いよいよ稽古スタート。台本を持ち、五戸さんが大きな動きをつけていく。村山さん演じるスカーレットと山内マリコさん演じるメラニーのシーン。2人は恋敵でありながら、深い信頼関係で結ばれた友人同士でもある。この複雑な関係を、かたや恋愛小説の名手である村山さん、かたや等身大の女性の心情や葛藤を描いてきた山内さんで見せる。

メラニーは病弱な女性。山内さんが「このときの(メラニーの)健康状態って、0~10のどれくらいですか?」と聞くと、五戸さんが「2・5くらい」と答える。「かなり悪いね」と、稽古場になごやかな笑いが広がる。蚊の鳴くような声で演じる山内さんの前に立ち、「だめよ、あなたは休んでいなきゃ」と、村山さんが声をかける。しっかりとした発声で、堂々とした役者ぶりだ。
稽古の場面が変わり、スカーレット役は辛酸さんにバトンタッチ。英文学者・文芸評論家の阿部公彦さんが演じるメラニーの夫アシュリとのシーンになる。
「僕は戦争で全てを失った」と気弱そうに演じる阿部さんには、理知的な雰囲気が漂う。「どうでもいいわ、そんな話」。ぴしゃりとはねつけるスカーレット。普段は控えめな辛酸さんの強気の演技に、稽古場はまた笑いに包まれる。

3時間の予定を延長するほど、稽古に熱が入る。プロの俳優のように、滑らかなセリフ回しとはいかないが、演出の五戸さんは「作家のみなさんは、文章を通して人の姿を見ているから、演じる役の姿も見えている。十分やれます」と保証する。
自宅のある長野県・軽井沢から駆けつけた村山さんは、「物書きは、普段一人で仕事をしているから、たくさんの人と関われるのは楽しいですね」と充実感を見せる。一方で、「チケットを買っていただいて上演するので、素人の遊びで終わることのないようにしたい。責任重大です」と気を引き締めていた。

明治に源流…伝統受け継ぐ「盛岡文士劇」盛況
文士劇を最初に上演したのは、尾崎紅葉による文学結社・

昭和に入った1934年、文芸春秋が読者サービスのために「文春文士劇」をスタートさせた。こちらも評判を呼び、戦争で一時中断したが戦後に復活し、78年まで続いた。
文春文士劇に出演した作家は数多い。三島由紀夫や石原慎太郎、井上ひさし、有吉佐和子ら、ジャンルも世代も幅広く、当世を彩る作家たちがそろい踏みした。作家の人気で、役の大小が決まることもあったという。
「作家がスターだった時代―文春文士劇の45年」の著作があり、今回、「風と共に去りぬ」の脚本を務める道又力さんは「文士劇に出演するのが作家としてのステータスだった時代があった」と語る。
この伝統が、岩手・盛岡で受け継がれている。当地在住で、文春文士劇への出演が夢だった直木賞作家・高橋克彦さんが発起人となり、95年、岩手県内や東京などの作家を集めた「盛岡文士劇」を開催。現在まで30年以上にわたり続く、人気の催しとなった。
近年、盛岡の盛況に触発され、2024年には黒川博行さんや朝井まかてさんら、関西や九州拠点の作家による「なにげに文士劇」も開催。今回の日本文芸家協会文士劇にも、盛岡で長年出演してきた井沢元彦さんが参加しており、道又さんも、「盛岡」の脚本を担当してきた。道又さんは「文士劇はエンターテインメント。わかりやすく演じやすい台本を心がけている」と話す。


























