振付家・金森穣が「快挙」「岐路」の両面で注目…バレエ「かぐや姫」のパリ上演決まる、芸術総監督を務める専属舞踊団は存続の危機
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日本を代表する振付家、金森穣が快挙と岐路の両面から注目されている。東京バレエ団が来年5月、金森演出・振り付けのバレエ「かぐや姫」をパリ・オペラ座ガルニエ劇場で上演することを発表。一方で、芸術総監督を務める新潟市民芸術文化会館「りゅーとぴあ」の専属舞踊団「Noism Company Niigata」が存続の危機に直面している。(小間井藍子)

海外で高く評価される日本人ダンサーは数多いが、日本人振付家は少ない。150年以上の歴史を誇るガルニエ劇場で、日本人振付家の作品が日本のバレエ団によって上演されるのは歴史的快挙だ。
東京バレエ団は1964年創設。66年から海外公演を始め、以来、33か国で799回公演を開いた。「ザ・カブキ」などモーリス・ベジャールの振り付け作品が高く評価されてきたが、「創業者の佐々木忠次(2016年死去)は、海外公演をやるたびに『日本人の振り付け作品はないのか』と言われていた。佐々木から引き継いだ夢を何とか実現できないかと思っていた」と同バレエ団を運営する日本舞台芸術振興会専務理事の高橋典夫は語る。
2017年に同バレエ団から依頼を受けた金森は、「竹取物語」から着想を得て振り付けを開始。23年に完成させ、全幕公演にこぎつけた。団長の斎藤友佳理は「穣さんに『かぐや姫』でバレエを作ってもらいたいと話してから何年もかけてここまでたどり着いた。今回の公演は、日本のバレエ界にとっても大きな進歩となる」と感慨深そうだ。
音楽は全編ドビュッシーの曲を使い、女性ダンサーの群舞で竹やぶを表現するなど独創的でスタイリッシュな作品だ。「日本発のバレエ作品を欧州の方たちに見ていただけるのは本当にうれしく思いますし、この1年が待ちきれない」と金森。今後は細かなニュアンスを調整するという。
かぐや姫を踊る秋山瑛は、「オペラ座はバレエをやっている人にとって憧れの舞台。今回携わることができたのは光栄」、姫と恋に落ちる道児役の大塚卓は「プレッシャーを感じるが、瑛さんと新たな『かぐや姫』を作り上げたい」と笑顔を見せる。
海外公演に先立ち、5月5、6日に上野の東京文化会館で上演。その後、イタリアでの1幕のみの上演を経て、来年5月26~29日にパリ公演を行う。(電)03・3791・8888。
総監督を退任、市とのすれ違い
パリ公演を決めた一方で、金森は来夏で国際的レベルに育て上げた「Noism――」の総監督を退任する。背景には、制度をめぐり、新潟市とのすれ違いとも言える溝がある。
Noismは、2004年設立。日本初の公共劇場専属舞踊団で、金森が妥協なき指導で鍛え上げたダンサーが、鋭く重厚な動きで独創的な作品を作ってきた。「かぐや姫」の評価もNoismでの22年間の経験あってのものだろう。
ところが、新潟市が22年に導入した「レジデンシャル制度」により、芸術監督の任期は2期10年と区切られた。金森は「芸術監督があってこそ集団が存在している。10年ごとに舞踊団が丸ごと入れ替わることになるのは文化の継承を考える上で無謀」などとして任期の撤廃を求めていたが受け入れられず、昨年末に1期限りでの退任を表明した。
運営する市芸術文化振興財団によると、「ぜひ続投を」と3度にわたり要請したが、金森の意向は覆らなかったという。財団事業企画部長の榎本広樹は「本当に残念だが、退任の意志を尊重したい。一方で、新潟市もレジデンシャル制度を今のところ変える必要はないという判断だった」と苦渋の表情だ。現在、新たな芸術監督の選定法を協議中で、「近いうちには発表したい」という。
金森を除くNoismのメンバーは3月、国際活動部門芸術監督を務める井関佐和子を後任の監督にと財団に要望した。金森の妻でもある井関が継げばNoismは継続するが、関係のない人物が選ばれると、存続は困難だ。金森は、「Noismをどうするのか。財団としても新潟市としても早く判断を」と語る。5月9日にりゅーとぴあで市民への説明会を開くという。
メンバーの思いも複雑だ。双子の姉すみれとともに21年から在籍する庄島さくらは「ダンサーが舞踊だけに没頭できる環境は国内でもここだけ。早く解決してほしい」、同じく21年から活動する糸川祐希も「穣さんの作品を踊ると生きていると実感できる。ずっと踊り続けたい」と訴えている。


























