[LEADERS]本屋にチャンス届ける…トーハン会長 近藤敏貴氏 63
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出版取次大手トーハンが小型書店の開業をサポートするサービス「HONYAL」(ホンヤル)を始めた。出版物の卸売りを担う取次会社が書店の振興に取り組むのはなぜか。近藤敏貴会長に聞いた。
小型店増へ 採算モデル見直し

今、全国の28%の自治体に書店がありません。いろいろな手を打っているのですが、まだ減っています。
でも世界を見ると、韓国やフランスなどでは書店は減っていない。むしろ独立系の個性的な書店が増えています。日本でも同様に、小型でも特色のある書店が増える可能性はあると考えたことがスタートです。調べてみると、実際に増えつつあることもわかりました。
これまで日本で小型書店が作りにくかった責任の一端は我々にもあって、少額取引は採算が合わず、辞退せざるを得なかったのです。ホンヤルではその採算モデルを見直しました。
<ホンヤルは連帯保証人や信認金(取引保証金)は原則不要。取り扱いは注文品のみで配送は週1回。小型書店が参入しやすく、取次会社の配送コストも抑える仕組みとし、2024年10月にサービスを始めた>
最初の導入事例は、10年前から町に本屋がなかった北海道南幌町の「はれっぱえほん館」です。
「はれっぱ」は、子どもの室内遊戯施設がメインで、開設後の1年間で来館者数が21万人を超えました。ファミリー層に認知された場所で、新たに絵本の売り場づくりをお手伝いできてよかったと思います。
ホンヤルではこれまでに3店舗開店し、4月にも7店舗オープンする予定です。開業相談は3月末時点で400件を超えました。75%は個人の方です。自治体とも連携して、無書店地域をゼロにしたいという思いはありますね。
育ててくれた書店に恩返しを
<取次会社は出版物の仕入れと配本だけでなく、配送や代金の回収、情報提供の役割も担う。入社以来、長く担当したのは書店への営業だった>
書店の売り上げを上げるために何をやるか、店の人たちと考え、協力して動くのが基本的な仕事です。最初は東北・北海道の書店を担当しました。
初めての出張は岩手県の大船渡にある小さな本屋です。港で釣りをしていた社長さんにあいさつすると、食事に連れていってくれて。地元出身の新沼謙治さんのポスターがあって、「嫁に来ないか」が流れているような食堂です。自分もこういう心のかよった人付き合いが好きでしたね。
ときどき社内で言うのは、トーハンで一番多くの時間を本屋さんと共にしてきたのは自分だと思うよと。店の品ぞろえを話し合ったり、新学期には教科書の販売を手伝ったり。美術全集を一緒に外販したこともあるし、ほかの地域で面白い販売事例が出たら、自分の担当書店と「もっといい売り方はないか」って知恵を絞るのも楽しかった。気心が知れてくると、それこそ店番や子守まで頼まれることも多かったですよ。
その後、北海道支店に行き、大阪支店長や近畿営業部長、西日本全体の担当もやったのですが、各地の書店さんに、生き方も含めて多くのことを教えてもらいました。
なぜ今、本屋を減らさないためにがんばっているのかというと、恩返ししたいと思っているんです。実際、私を育ててくれたのは本屋さんですから。
出版文化のため 苦しくてもやり続ける

<紙の出版物の市場規模は1996年をピークに減少に転じ、書店数も20年間で半減した。経営環境が厳しさを増す中、2019年に中期経営計画を策定。本業改革と事業領域の拡大に乗り出した>
取次事業が赤字になる一番の理由は、配送運賃の高騰を経費削減や売り上げでカバーできていないことです。
その中で本業改革をどうやろうかと、ドイツへ視察に行きました。ドイツは日本と同じように本は定価販売で返品もできるのですが、返品率は10%くらいです。日本は30~40%もあります。
何が違うのかというと、日本では出版社が決めた製作部数があり、それを取次会社が書店に配本しています。
ドイツでは発刊の半年から1年前にカタログを作り、書店はそれを見て発注し、出版社はそれをもとに製作部数を決めます。だから返品率が低いんですよ。


























