コロナ禍で浸透した「人流データ」、ビジネスに活用の波…右肩上がりの市場規模に「伸びしろまだある」

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 2019年末からのコロナ禍で「人流」という言葉が浸透した。スマートフォンの位置情報で人の動きを可視化し、感染予防に利用したのがきっかけだった。あれから6年。位置情報分析の現在地を探った。

ビジネスでも存在感 市場規模600億円

 「あらゆる分野で位置情報分析が必要な世の中が来つつある」。関連企業・大学による業界団体「LBMA Japan」の川島邦之・代表理事(48)は言い切る。

 GPS(全地球測位システム)に基づく位置情報は、カーナビやスマホの地図などに活用されている技術だ。16年に現実世界とゲームの世界を位置情報でつないだスマホアプリ「ポケモンGO」が国内で配信され、より身近な存在になった。

 さらにコロナ禍における「人流データ」で存在感を高めた。位置情報で人流を可視化できることが知られると、市場戦略や防災、物流など様々な分野から引き合いが殺到。膨大なデータを瞬時に処理できるAI(人工知能)の進歩もあって関連企業が増え、20年に15社だった「LBMA」加盟企業は、25年には115社となった。

 デロイトトーマツミック経済研究所の佐久間尚基・上級研究員の調査によると、位置情報ビジネスの市場規模は、2025年度が600億円と予測され、毎年2割弱の成長を続けて28年度には1000億円に到達するという。

 佐久間氏は「背景には深刻な人手不足があり、工場や倉庫での作業時間の可視化、物品管理の効率化などで位置情報分析の導入が増えている」と指摘。「位置データにどんなサービスを組み合わせるかが鍵で、老朽化するインフラの監視など伸びしろはまだある」と語る。

「建物のどの階にいるか」測定可能 

 各企業は、様々なサービスへの応用を進めている。ソフトバンクグループの「 Agoopアグープ 」(東京)は、昨年1月の能登半島地震発生直後、位置情報で被災住民らの動きを分析。孤立地域や通行可能な道路、避難所の混雑度などの情報を日本赤十字社に提供した。

 電子部品・半導体商社の「ネクスティ エレクトロニクス」(東京)は「工場作業の標準化」を実現する端末を販売している。作業員の手や工具に超音波を出す端末を装着して位置を測定。動きを記録し、別の作業員への指導に使用するほか、作業時に正しい手順を画面に示し、工具の位置が違うと作動しない仕掛けを施している。誤差1センチ以内の高精度が自慢だ。

 測位情報サービス「 MetComメットコム 」(東京)は、スマホ内蔵の気圧センサーと街中の気圧計のデータを比較し、「人が建物内でどの階にいるか」を測定。位置を3次元で把握することで、屋外から地下街、ビルまで街全体の都市設計に応用できるという。

 富山市は人流データ解析「 unerryウネリー 」(東京)と、中心市街地の人の流れを分析。駅など主要地点から600メートルほど離れると、徒歩での移動が減る傾向をイベント企画に活用した。街中に会場が点在する形にし、客の回遊性を高めたという。

個人識別 リスク

 一方、プライバシーに関するリスクも指摘されている。位置情報単体では個人情報に該当しないが、個人を識別できる場合は該当するとされる。総務省も電気通信事業者向けの指針で「特に保護の必要性が高い」としている。

 「LBMA」も独自の指針を策定し、▽データ収集時の明示的な同意の取得▽特定の個人とひも付けできるデータの利活用禁止――などを周知している。川島代表理事は「位置情報分析は必須の『デジタルインフラ』になりつつある。不安感を抱かせないよう、法律だけでなく倫理も守る必要がある」と話す。

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