度を越す介入「政府の失敗」 米中、関税や統計「政治化」…編集委員 小川直樹  

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 トランプ米大統領による経済問題の「政治化」が目に余る。政治的な理由で高関税を発動したり、雇用統計の修正を政治操作と決めつけて担当幹部を解任したり、枚挙にいとまがない。権力を 恣意しい 的に行使する姿は、中国の 習近平シージンピン 国家主席の手法に似る=《1》=。

国家資本主義

 経済問題の政治化がどんなものかを知るには、ここ1か月のトランプ氏の言動を振り返ると良い。

 <7月30日>トランプ氏はブラジルに対して計50%の関税を課す大統領令に署名した。貿易黒字の相手に高関税をかけた背景には、盟友のブラジル前大統領が大統領選敗北後も権力の座にとどまるためにクーデターを企てたとして裁判が行われていることへの不満がある。自身と似た境遇に同情したのかもしれない。

 <8月1日>米労働省が雇用統計の大幅な下方修正を発表した=《2》=。腹を立てたトランプ氏はすぐに労働統計局長の解任に動いた。「共和党と私を悪く見せるために不正に操作された」と主張したが、根拠は示していない。雇用統計の速報値は追加情報に基づいて定期的に修正されており、景気悪化時に下方修正幅が大きくなる傾向にある。

 <8月11日>トランプ氏は記者会見で、米半導体大手エヌビディアに半導体の対中輸出を許可する見返りに中国での売上高の15%を支払わせる取引をしたと述べた。要は許認可権限を交渉材料に「上納金」をとるということだ。民間企業から大金を巻き上げる法的根拠は説明していない。

 <8月12日>トランプ氏はSNSで米金融大手ゴールドマン・サックスが政権の「功績」を認めようとしないとなじり、新しいエコノミストを雇うよう迫った。高関税による物価上昇の負担がまもなく消費者に及ぶと分析したリポートが気に入らなかったようだ。

 共通するのは法的な正当性や経済的な理由ではなく、自らの評判や損得勘定に基づいて権力を行使している点だ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)経済担当チーフコメンテーターのグレッグ・イップ氏は米国の現状を「米国の特色ある国家資本主義」と名付けた。「中国の特色ある社会主義」をもじったもので言い得て妙だ。

習氏が「先達」

 「経済・貿易問題の政治化」は、中国外務省の報道官が米国を非難する際の決まり文句の一つであり、それ見たことかと思っているかもしれない。だが、こうした非難はブーメランのように自らに返ってくる。

 <2020年>オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源の独立した調査を求めると、中国は政治問題化させ、大麦やワインなど多くの豪州産品に高関税をかけて報復した。

 この年は民営経済における統一戦線工作の全面的強化も打ち出した。要するに中国共産党が国有企業だけでなく民営企業の経営にも介入すると正式に宣言したということだ。

 <2021年>独占禁止当局がアリババ集団に対し、独禁法違反で巨額罰金を科すなど、巨大IT企業の締め付けを一気に強化した。同時期に「共同富裕」の実現に向けて高所得者と企業に税とは別に「社会還元を増やすよう奨励」し、アリババは1000億元(約2兆円)の拠出を発表した。

 <2023年>国家統計局は7月の16~24歳失業率の公表を突然取りやめた。大学の卒業シーズンにあたり、悪化が予想されていた。調査対象から学生を除外して公表を再開するまで5か月を要した=《3》=。

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7021580 0 経済フォーカス 2025/08/25 05:00:00 2025/10/22 17:30:23 2025/10/22 17:30:23 /media/2025/08/20250824-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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