[竹森俊平の世界潮流]AIブーム 米、強気の投資…「回収」先送り 試される忍耐力

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 米国で強気のAI(人工知能)関連投資が続いている。AIブームが抱えるリスクと、AI推進を掲げるトランプ米政権にとって必要な政策は何か。国際経済学者の竹森俊平氏が解説する。

「美人投票」

 米テスラの株主総会は11月、最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏に対し、氏が独自に運営するAI・宇宙事業の力も借り、テスラの時価総額を8・5兆ドル(約1300兆円)まで引き上げることなどを条件に、10年間で最大1兆ドル(円ではない)の報酬を承認した。「マスク氏を失うことを考えれば1兆ドルは安い」という株主の言葉には今の米国のスター経営者偏重が色濃く映る。

 米国では富裕層が消費しきれないカネを株につぎ込むためバブルが頻発すると言われるが、「バブル」とは何か。経済学では、株式から今後受け取り見込みの配当を適切に合計したのが株の「適正価格(ファンダメンタル価値)」で、それを超える株価はバブル。株主が 莫大ばくだい な時価総額達成をマスク氏個人に求めるテスラの例から見ても、投資家は適正価格に気をとめず、強気一点張りのスター経営者に群がる。株式相場とは人気銘柄に投資家が殺到して株価をつり上げる「美人投票」とケインズは評した。

 しかしAIブームを 牽引けんいん する エヌビディアの時価総額が5兆ドルに達したのはさすがに 暴走と投資家は考え、直近でAI関連株価は下落、恐怖指数も上昇した。

結節点

 2014年にスタンフォード大学が開いた台湾積体電路製造(TSMC)の創業者モリス・チャン氏が主賓のセミナーでは、同氏の業績を米エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが紹介し、こう指摘した。

 <先端半導体産業が今のように製造(ファブ)と設計(ファブレス)に分離されたのは、チャン氏がファブに特化したTSMCを創業したためだが、チャン氏の意図は「プラットフォーム」作りにあった。プラットフォームを備えた駅が列車の結節点となり、乗り換え、乗り継ぎを可能にするように、TSMCというファブのプラットフォームがあるために、そこに結節する百花 繚乱りょうらん のファブレスが育つのだ>

 今やエヌビディアもプラットフォーム。同社のGPU(画像処理半導体)を使用するAI企業が勃興し、同社はAIネットワークの結節点になった。エヌビディアは直近の決算で8~10月期の最終利益が前年同期比65%増の約5兆円という業績を公表、一時株安を鎮めたが、それでも投資家の不安は収まらなかった。業績好調な理由が一般国民のAI活用の増加ではなく、「チャットGPT」を開発した米オープンAIを筆頭とするAI企業のデータセンター建設の急拡大であったためだ。

 説明のために「財X」について3段階のシナリオを考える。〈1〉「出発」では、Xの供給基盤が確立〈2〉「飛躍」では、債務か増資で資金調達した企業がXの供給拡大のため先行投資をする〈3〉「回収」では、Xへの需要が供給に届くまで成長し企業利益が拡大、企業は先行投資費用を回収する。

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7391697 0 経済フォーカス 2025/12/01 05:00:00 2025/12/01 05:00:00 2025/12/01 05:00:00 /media/2025/11/20251130-GYT8I00056-T.jpg?type=thumbnail

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