義経のゆかしき逃避行…逢坂の関(大津市)
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これやこの往くもかえるも別れては知るも知らぬも逢坂の山隠す霞ぞ春はゆかしける――――長唄「勧進帳」より

歌舞伎「勧進帳」の序盤、花道は、琵琶湖になる。
兄・源頼朝が差し向けた追っ手から逃れるため、源義経一行は山伏や強力に身をやつして京を脱出、逢坂山を越えて琵琶湖を舟で渡り、

蝉丸の和歌を採り入れた能「安宅」の
「勧進帳」で義経は、花道を進む途中で一度、後ろを振り返る。あの山は、霞がかかってもう見えない。二度と、京には戻れないのか――。
「安宅」では「霞ぞ春は恨めしき」だが、長唄では「ゆかしける」に変わる。たとえ切ない逃避行だとしても、義経の旅なら「上品で、心
義経に続いて、花道に家来の四天王と弁慶が登場する。京から琵琶湖に至る道の周辺には
長唄が「波路はるかに行く舟の

湖岸に、一行が敵から身を隠したと伝わる「義経の隠れ岩」がある。地元の観光ボランティア川添宏司さん(84)は「ここは港から少し離れています。追っ手に見つからないようここに舟を着けたのでしょう」と解説する。いくつかある中から最も小さい岩を指さし、「義経は小柄で、ここに隠れたと言われていますね」。

岸を上がると「日本のさくら名所百選」に選ばれている海津大崎の桜がある。約4キロにわたるソメイヨシノの並木道で、見頃になると湖上から花見ができる船も出て、人気だという。
吉野山や平泉もそうだが、義経の行く先には、なぜか桜の名所が生まれる。その華やかな取り合わせこそが「ゆかしける」なのだろう。
逢坂の関
(おうさかのせき)
京都と大津をつなぐ交通の要衝で、平安時代の盲目の歌人、蝉丸の「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」をはじめ、数多くの歌が詠まれてきた。歌舞伎「関の
文・森重達裕
写真・中村光一
文学、芸能…「出くわす」地形
その名から「出会い」を想起させる逢坂の関は、源氏物語をはじめ多くの文学、和歌、芸能の題材になってきた。
大津市歴史博物館の学芸員、横谷賢一郎さん(57)は「今でも逢坂の関あたりを車で通れば昔ながらの急なS字、L字カーブが続いているのがわかると思います。人と人が出会う時は、遠目からは予見できず、突然、出くわす形になる。印象的な歌が生まれるのは、あの地形がそうさせているのではないでしょうか」と語る。

関の正確な位置は今もわからないが、国道1号沿いに逢坂の関記念公園があり、付近には蝉丸神社、関蝉丸神社、能「関寺小町」にゆかりの長安寺などが点在している。京阪京津線に沿うように緩い下り道を30分ほど歩くと、キラキラと湖面が輝く大津港に出た。

義経一行が舟に乗り込んだ(とされる)大津港では、1982年から琵琶湖遊覧船「ミシガン号」が運航されている。船内では周辺の観光ガイドが聞けるほか、歌やダンスのショーも楽しめる。
大津から海津まで縦断する定期船はないが、今津港と長浜港を
竹生島は、義経というよりは琵琶の名手として知られた平経正ゆかりの島だ。国宝指定の本殿を持つ

島内に「かわらけ投げ」ができる場所があった。2枚渡され、1枚目に自分の名前、2枚目に願いを書き入れて15メートルほど先の鳥居めがけて投げる。鳥居をくぐらせることができれば願い事が成就するという。記者は小、中と野球部。「20キロ減量」と書き入れ、勇んで投げた結果……、二つとも全然、鳥居に届かなかった。
弁才天堂に続く急な石段をゼイゼイと息を切らしつつ上る。「ダイエットに近道なし」という、しごく当然な道理を竹生島の神様と仏様からきつく諭されたような気がした。
●ルート 京都駅からJR琵琶湖線山科駅、京阪京津線に乗り換えて大谷駅まで20分。同駅から逢坂の関記念公園まで徒歩5分。
●問い合わせ びわ湖大津観光協会=(電)077・528・2772、びわ湖高島観光協会=(電)0740・33・7101
[味]ウナギと厚い卵焼きのきんし丼

逢坂の関跡そばのうなぎ料理店「逢坂山かねよ」((電)077・524・2222)は1872年(明治5年)創業。村田章太郎社長(61)によると、かつては峠茶屋だったが、うなぎ行商人が看板娘と恋に落ち、店を始めたという。うなぎに特化した漫画「う」の作者、ラズウェル細木さんもこの店を愛し、宣伝用の漫画「逢坂山かねよ物語」を描いてくれた。
名物は、
店名に「日本一のうなぎ」と冠する。尾崎紅葉、野口雨情といった文人が店を訪れ、「日本一」とたたえる句や歌を残している。
ひとこと…本屋大賞作品の舞台
大津市は、2024年の本屋大賞を受賞した「成瀬は天下を取りにいく」(宮島未奈著)の舞台。主人公の成瀬あかりは続編「成瀬は信じた道をいく」では、びわ湖大津観光大使になった。びわ湖大津観光協会が小説ゆかりの地を巡るパンフレットを制作しており、ホームページからPDFファイルがダウンロードできる。


























