近代の虚無 問うた三島…帯解(おびとけ)(奈良市)
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小春日和の空を縦に区切る竹林を左に見ながら少し行くと、その奥に隠れるように一宇の堂がある。――――徳岡孝夫、ドナルド・キーン著「悼友紀行」(1973年)

三島由紀夫の自決から1年ほどたった1971年11月、徳岡孝夫とドナルド・キーンは連れだって亡き友を悼む旅に出た。まず、最後の長編小説「
バス停のある交通量の多い通りを折れて緩やかな坂をのぼると、静けさにのみ込まれていく。左右の木々が濃くなり、少し心細くなってきたころ、門の影が前方に、光に包まれて見えた。
この静寂と張り詰めた空気は当時のままではないか。寺は非公開で、山門までで引き返すのは残念だが、門の奥に見える建物をはじめ、周囲を包む清新な気配に、あの小説の結末が浮かんだ。

45年の生涯で最後の5年間、書き継がれた長編小説の重要な場面に、この地は出てくる。宮家へ嫁ぐ綾倉聡子との恋に破れ、二十歳で亡くなる
だが聡子は清顕について言う。「そんなお方は、もともとあらしゃらなかったのと違いますか?」。これまでのすべては幻だったか。自身の足元が崩れていく感覚の中で、本多は夏の庭を見て「記憶もなければ何もないところへ、自分は来てしまった」と思う。

評伝「

「近代がひとつのニヒリズムに行き着いたことは民族、国を超えて普遍的な問題。三島は虚無を出発点にそこからどう生きていくか、問いを投げかけている。生誕100年に時空を超えて三島を読む扉が、ここにある」
奈良では
徳岡孝夫
(とくおか・たかお)
1930~2025年。ジャーナリスト。毎日新聞バンコク特派員時代の取材などで三島の信頼を得、自決の日に
ドナルド・キーン
1922~2019年。日本文学研究者。三島文学の理解者として親交を深めた。
「悼友紀行」は2人が奈良、倉敷、松江、津和野と三島作品形成の地を巡り、語り合う中で生まれた興趣あふれる旅行記。中央公論社版は品切れ。「三島由紀夫を巡る旅―悼友紀行―」(改題、新潮文庫)は電子版で読める。
文・山内則史
写真・安川 純
寺に子宝伝説 いちごの産地

万葉まほろば線で奈良から2駅目、
「帯解駅舎保存・活用の会」代表の木原勝彬さん(80)は「1926年に駅舎の大改築があり、その当時に近い形で保存、活用する。三島さんが取材に来た時の駅舎の姿に近いと思います」。「

少し歩くと帯解寺がある。平安時代、子に恵まれなかった文徳天皇のお
寺務所の女性は「北海道から沖縄まで全国からお参りにいらっしゃいます。赤ちゃんを連れてまた来てくれたのを見ると、うれしくなります」とほほえんだ。

周辺は田園地帯でビニールハウスが点在する。萩原いちご農園の萩原健司さん(43)によると、奈良県は昭和30年代からいちごのハウス栽培が盛んで「奈良の盆地に白波が立つ、と言われたほど」という。今は2011年に品種登録された「
木原さんに勧められて広大寺池で夕日を見た。推古天皇の時代の築造とも伝わる巨大なため池は、農閑期で水位が低い。池のそばの畑から男性に「コウノトリは行ってしまったよ」と声をかけられた。最近、つがいが池で餌をあさっていたという。安産祈願の里でコウノトリとは、ちょっと話ができすぎか。
●ルート 京都駅からJR奈良線で奈良駅まで約50分。万葉まほろば線に乗り換え、帯解駅まで6分。
●問い合わせ 奈良市観光戦略課=(電)0742・34・5135
[味]健康メニューの新カフェ

今年5月に開店した「みずいろcafe」はモーニングからランチ、午後のお茶まで、どの時間帯でもくつろげる店。元高校教師の黒田
妻の具視さん(48)は看護師の経験を生かして健康志向のメニューを考案。20回以上の試作で完成した、米粉を使ったグルテンフリーのワッフル(写真はキャラメルバナナ+ホイップのせ。750円)や、甘いものを医師に止められている人でも楽しめる低糖質スイーツも供する。今月からは朝とランチに野菜など素材の風味と栄養を生かした
ひとこと…三島作の朗読劇
奈良出張の前夜、三島作「近代能楽集」の1編「


























