師も走る12月、駒が盤上駆け巡る研究合戦…ランキング戦1組1回戦 稲葉陽八段×森内俊之九段
完了しました
第1譜

ランキング戦1組1回戦
(先)八段 稲葉陽×九段 森内俊之
▲2六歩 … △8四歩 …
▲2五歩 … △8五歩 …
▲7八金 … △3二金 …
▲3八銀 … △7二銀 …
▲9六歩 … △1四歩 …
▲3六歩 … △8六歩 …
▲同 歩 … △同 飛 …
▲5八玉 … △8二飛 2
▲8七歩 … △6四歩 …
▲2四歩 … △同 歩 …
▲同 飛 … △2三歩 …
▲6四飛 … △5二金 …
▲3五歩 … △3四歩 1
▲6五飛 … △3三金 1
▲7六歩 … △4四歩 2
▲3四歩 1 △同 金 …
▲3五歩 … △2四金 1
▲3七桂 …
持ち時間各5時間
△0時間13分 ▲0時間08分 35手

現代将棋の序盤
「師走」に駒も走った。
全てが好カードの1組1回戦の中でも、本局は重量感のある対戦だ。
開始20分前に着座し、雲一つない青空に目を向ける稲葉。スラックスの折り目同様、ミネラルウォーターやお茶が等間隔にきれいに並んでいる。
5分前に「おはようございます」と通る声で挨拶をかわし、森内が対局室に入ってきた。振り駒は「と金」が4枚。両者ちらっと目をやったが、すぐ盤上へ視線を戻す。
先手稲葉の▲2六歩から戦法は「相掛かり」に。記録係が書き終えるのをみて、森内は△3二金、△7二銀を着手。その動作が何度も続いていく。「実戦経験はありませんでしたが、以前調べたことがあったので、思い出しながら指していました」と森内は話す。そう、指し手は決まっている。それは稲葉も同様で、着手によどみがない。
開始から20分余りで指了図の▲3七桂まで進む。まさに現代将棋を象徴する序盤戦である。
この翌日は「冬至」。師も走る12月に、盤上でも駒が駆けてゆく。(高野秀行)

第2譜

ランキング戦1組1回戦
(先)八段 稲葉陽×九段 森内俊之
△3六歩 3
▲2五歩 … △3七歩成1
▲2四歩 … △3八と 1
▲同 金 … △3二銀 …
▲2三歩成… △同 銀 …
▲2四歩 … △同 銀 1
▲2三金 … △5四銀 11
▲6六飛 … △1三角 …
▲2二歩 … △3三桂 3
▲2一歩成… △3六歩 18
▲1一と … △3五銀 7
▲1三金 … △6三銀上1
▲9七角 11 △6四歩 4
▲5六香 5 △3七歩成5
持ち時間各5時間
△1時間13分 ▲0時間29分 62手

角損
「久しぶりですね」「いやいや、最近どうですか?」。あちらこちらから声が聞こえてくる。森内が棋士になった頃、朝の対局室はこんな雰囲気であった。午前中は雑談を交えながら、作戦を決め、昼食を注文する。「牧歌的」といっては語弊があるかもしれないが、何とものんびりした時間が流れていた。
あれから30年余り、今日の対局室から聞こえるのは、研究と研究がぶつかり合う駒音だけだ。
△3六歩▲2五歩から一直線の取り合いになり、稲葉は▲2四歩~▲2三金と森内陣に襲いかかる。指し手はほぼノータイムだ。
一方、森内は△5四銀~△3六歩で先手飛車の可動域を狭め、△3五銀~△6三銀上と泰然自若の構え。しかし、指了図を見ると、確かに先手の飛車は狭いが、駒の損得は先手がほぼ角得である。これで良いのか?
「一応この辺りまでソフトで調べたことがあり、経験がなく、やってみたかったという感覚でしたが、研究が甘かったですね」と後日、稲葉が話す。後手十分の局面ではないかという。改めて思う。恐るべき、森内俊之。(高野秀行)



























