千日手を選ばなかった「甘さ」も鷹揚流…八代七段は1分将棋の▲5四馬が好判断、強心臓で白星[第38期竜王戦]1組2回戦 広瀬章人九段×八代弥七段

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第1譜

(先)七段 八代弥 × 九段 広瀬章人

▲2六歩 1 △8四歩 …

▲2五歩 … △8五歩 …

▲7六歩 1 △3二金 …

▲7七角 … △3四歩 …

▲6六歩 … △3三角 …

▲7八金 … △6二銀 …

▲5八金 … △4二銀 …

▲4八銀 … △7四歩 …

▲6九玉 2 △5二金 3

▲3六歩 2 △7三桂 7

▲5六歩 17 △6四歩 10

▲6八銀 10 △4四歩 4

▲6七銀 7 △4三銀 3

5時間△0・33分▲0・47分26手

◇…すごい棋士

 1組ランキング戦2回戦で、竜王経験者の広瀬と実力者の八代が相まみえた。対戦成績は広瀬1勝、八代4勝で、八代がリードしている。

 3月6日に東京で行われた一戦は、本田奎六段が解説を務めた。八代には10年近く将棋を教わっており、「私が三段の頃は実力差があって、得るものがあったかは分からないのに続けてくださった。感謝しています」と恩を感じている。

 広瀬門下の山川泰熙四段とは同世代。練習将棋を指してきた縁があり、広瀬主宰の研究会にも参加している。「仲のいい師弟。広瀬さんはすごい棋士なんですけど、人柄の良さからか、弟子の山川君がグイグイいく関係なのが面白いですね」

 本田六段の「すごい棋士」という言葉には力がこもっていた。実績十分のトップ棋士なのだが、おおらかな性格で親しみやすい。そこが広瀬の魅力である。

 振り駒で先手番を得た八代は、角換わり模様から▲6六歩(図)と (がん)() に変化。広瀬も雁木に組んで対抗した。本田六段は「相雁木は千日手になりやすい戦型。先手は打開するプランを持っておかないといけない」と解説する。(松本哲平)

広瀬九段(左)と八代七段が集中力を高める中、振り駒が行われた=吉田祐也撮影
広瀬九段(左)と八代七段が集中力を高める中、振り駒が行われた=吉田祐也撮影

第2譜

▲3七桂 1 △9四歩 3

▲9六歩 1 △5四歩 …

▲1六歩 3 △1四歩 …

▲4六歩 1 △6三銀 …

▲4七銀 1 △4一玉 …

▲2九飛 … △8一飛 …

▲6八角 … △7五歩 27

▲同 歩 10 △9五歩 16

▲同 歩 2 △6五歩 …

5時間△1・24分▲1・12分44手

◇…前例を外れる

 「現代将棋は暗記が大事」と本田六段は強調する。藤井聡太竜王を筆頭に、活躍著しい棋士は研究の深さに定評がある。そんな中、本田六段から見ると、八代は「暗記に重きを置いていない。ただ前例をたどるのではなく、形の意味合いを考究するタイプ」だという。

 本局は八代に目指す形があった。本譜▲6八角は、昨年1月に指された朝日杯将棋オープン戦本戦の豊島将之九段―佐々木勇気八段戦が前例である。以下は△3一玉▲7九玉△2二玉▲3五歩と先手が先攻し、ほぼ一方的に攻めて快勝した。「やけに先手がうまくいっていたので、やってみたかった」と八代は言う。

 ところが、昼食休憩を挟んで、逆に△7五歩と仕掛けられ、八代は天を仰いだ。広瀬の研究かと感服したが、聞くと先述した実戦の存在は知らず、広瀬は「最近はあまり前例の有無を気にしなくなりました。まあ一言でいえば、サボっているということです」と笑う。

 だが、この言葉は額面通りには受け取れない。「この (がん)() の形だと▲7九玉△3一玉▲6八角という順を想定していた。本譜は得している気がして仕掛けた」と広瀬。しっかり知見を持っていたのだ。予定外の展開に、指了図で八代が長考に沈んだ。(松本哲平)

開始前の八代七段
開始前の八代七段

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