「初めのチャンスは見送れ」菅井八段の大山流と対峙した木村九段、▲8八金~▲5七銀は熟達の見切り[第38期竜王戦]1組3位決定戦 木村一基九段×菅井竜也八段

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第1譜

(先)九段 木村一基 × 八段 菅井竜也

▲7六歩 56 △3四歩 65

▲2六歩 … △4四歩 …

▲4八銀 … △9四歩 …

▲6八玉 1 △9五歩 …

▲7八玉 … △4二飛 …

▲5六歩 … △6二玉 …

▲5七銀 … 

5時間△1・08分▲0・59分13手

◇…千日手

 王位経験者同士の組み合わせとなった1組3位決定戦は5月22日、東京の将棋会館で行われた。両者が公式戦で対局するのは2020年以来だ。同日には、王位戦挑戦者決定戦が指されていた。

 対局開始前、会館の移転に伴って新設された対局室「 (しょう)() 」に入った木村の「広く使おう」の一声で、窓側に寄っていた盤駒や (きょう)(そく) が部屋の中央へ移った。対局者も座布団などを持ち、“引っ越し”を手伝う一幕があった。

 記録係の北村啓太郎三段による振り駒は、と金が3枚。先手番となった菅井が1筋を詰めて四間飛車にしたのに対して、木村は居飛車穴熊を目指した。菅井が▲8八飛から▲7八飛と攻撃をちらつかせて穴熊をけん制すると、木村は昼食休憩を挟んで考え、△8四角から△7三角と応じて、千日手が成立した。終局時刻は午後0時42分。30分後の同1時12分から再開されることになった。両者の消費時間に差はほぼなく、仕切り直しというところだ。

 思い出されたのは、4月17日に行われた竜王戦1組準決勝の菅井―佐々木勇気八段戦。戦型は異なるが、この時も菅井は▲8八飛~▲7八飛として千日手を選んだ。終局後、千日手について尋ねると、「特に気にしていなかった」と答えた。(江口武志)

千日手が成立し、木村九段(左)が駒を片付けた=富永健太郎撮影
千日手が成立し、木村九段(左)が駒を片付けた=富永健太郎撮影

第2譜

       △3二銀 …

▲7七角 … △7二玉 1

▲8八玉 … △4三銀 …

▲7八金 4 △8二玉 3

▲2五歩 2 △3三角 …

▲9八香 … △5四銀 1

▲6六銀 1 △6四歩 …

▲8六角 6 △4五歩 19

5時間△1・36分▲1・15分28手

◇…勝ちたい思い

 木村は第33期以来の本戦入りを目指す。対局前には、「本戦入りがかかった一局で負けることが多く、勝ちたいという思いが強い」と、本局に期する思いを語ってくれた。対する菅井は、その実績からは意外にも、本戦入りの経験がない。「いつもと変わらず対局に挑みたい」と語り、平常心で盤上に集中している。

 手番を入れ替えて始まった指し直し局は、千日手局と同様、木村の居飛車穴熊対菅井の四間飛車となっている。本局の解説を務めた藤井猛九段は、「振り飛車は、あまり手番が関係ない。後手になってもそれほど悔しくはないですね」という。

 菅井は本局も端歩を伸ばした。「端歩は飛車を回る前に突きます。位を取れたら四間飛車、互いに突き合う場合は三間飛車になることが多い。三間飛車は急戦への対応が必要で、端に手をかけると隙が生じやすい」と、振り飛車党の大家・藤井九段が教えてくれた。

 △5四銀に対して▲6六銀は大事な一手。無条件で後手の銀を進出させてはいけない。同じ意味では▲6六歩も有力だが、穏やかな展開になると端歩が生きやすい。

 ▲8六角は、部分的にはよくあるけん制だ。△6三銀なら、「穴熊が間に合いそう」(木村)だ。反発含みの△4五歩が常道だろう。(江口武志)

角道を開ける木村九段
角道を開ける木村九段

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