「可能性があるなら」京都競馬場の芝生で走った挑戦者…直球勝負の角換わりで「先行」[第38期竜王戦]七番勝負第4局 藤井聡太竜王×佐々木勇気八段戦<前編>
完了しました
第1譜

七番勝負第4局
(先)八段 佐々木勇気(0勝3敗)×竜王 藤井聡太(3勝0敗)
▲7六歩 … △8四歩 …
▲2六歩 … △3二金 1
▲2五歩 … △8五歩 …
▲7七角 … △3四歩 …
▲8八銀 … △7七角成1
▲同 銀 … △2二銀 …
持ち時間各8時間
△0・02分▲0・00分12手

京都競馬場
初めて京都市に競馬場ができたのは明治末。1925年(大正14年)にはそれが現在の伏見区に移され、今年、100周年を迎えた。同年は将棋界にとっても重要な年で、前年の24年に日本将棋連盟の前身となる東京将棋連盟が設立され、日本将棋連盟はこれを創設年としている。
25年には関西の阪田三吉八段が後援会に推され自ら名人を名乗るという事件もあった。東京に関根金次郎名人がいたにもかかわらずである。これを機に阪田は東京将棋連盟と絶縁状態となり孤立していくが、その前にあった関根と阪田の対決は一大ブームを巻き起こし、現代に続く将棋人気の端緒となった。
将棋も競馬も長くファンの人気に支えられている。第4局は、京都競馬場の開設100周年を記念して行われることになった。現代の藤井は100年前の関根や阪田に劣らぬ大スターである。青年期の阪田にとって関根ははるかに前を行く存在であったが、それをひたむきな努力によって追いかけ、やがて平手で破る実績を上げる。果たして、今の佐々木ははるか前を行く藤井に迫ることができるだろうか。
藤井には永世竜王が、佐々木には初タイトルがかかる七番勝負。11月12日。競馬場を見下ろす貴賓室「菊の間」で対局は始まった。(鈴木宏彦)

第2譜


七番勝負第4局
(先)八段 佐々木勇気(0勝3敗)×竜王 藤井聡太(3勝0敗)
▲1六歩 … △1四歩 2
▲3八銀 … △3三銀 1
▲3六歩 … △6二銀 1
▲4六歩 … △7四歩 7
▲7八金 … △9四歩 4
▲3七桂 5 △5二金 10
▲9六歩 1 △6四歩 1
▲6八玉 1 △6三銀 1
▲4七銀 3 △7三桂 1
▲6六歩 39 △8一飛 4
▲4八金 6 △6二玉 2
持ち時間各8時間
△0・36分▲0・55分34手
直球と右玉
挑戦者の調子がおかしい。前期七番勝負の佐々木は初体験の大舞台に戸惑いながらも、雰囲気を楽しみ、マイペースで戦った。いい将棋もたくさん指した。しかし、今年はここまでいいところがなく3連敗。用意した研究を藤井にかわされ、そこで立て直しが利かなくなっているようだ。他棋戦でも負けがこんでいるのが気になる。
だが、前日の佐々木は思いのほか明るい顔で現れ、競馬場の芝生の上を走ってみせた。前夜祭のあいさつでも真正面から胸の内を明かした。
「ご心配をかけているかもしれませんが、自分は大丈夫です。少しでも可能性があるならそれにかけたい」という言葉が印象に残る。誰よりも本人が自分の置かれた状況を分かっている。
先手角換わりは佐々木の得意戦法だが、藤井との竜王戦ではあえて封印してきた経緯がある。
「これまで直球を投げてこなかった挑戦者ですが、それはこの日のためでしょう。今回は満を持して投入すると思う」
立会人の山崎隆之九段は前日からそう言っていたが、その予想が当たった。佐々木の角換わりに対し、藤井は同形を避けた。意図は右玉である。(鈴木宏彦)



























