二冠へのリスペクト、羽生九段が対策を尋ねる進行…相掛かりの「匠」が手渡しの△8八歩を実らせる[第39期竜王戦]1組・羽生善治九段×伊藤匠二冠戦
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第1譜
(先)九段 羽生善治 × 二冠 伊藤匠
▲2六歩 … △8四歩 …
▲2五歩 … △8五歩 …
▲7八金 1 △3二金 …
▲3八銀 … △7二銀 …
▲9六歩 … △5二玉 1
▲1六歩 1 △1四歩 …
▲4六歩 … △7四歩 1
▲4七銀 … △7三桂 3
▲2四歩 1 △同 歩 …
▲同 飛 … △2三歩 …
▲2八飛 … △6四歩 …
▲7六歩 1 △8六歩 …
▲同 歩 … △同 飛 …
▲8七歩 … △8一飛 …
▲5八金 … △3四歩 …
▲5六銀 … △6二金 1
▲4五銀 6
5時間△0・12分▲0・19分33手
◇…二冠と永世七冠
1月30日の将棋会館特別対局室。振り駒はと金が4枚出て羽生の先手が決まった。その瞬間、羽生はみけんに深いしわを寄せて考え込んだ。恐らく、先手になった時の作戦(入念に整理されているはずだ)を思い返していたのだろう。だが、その険しい表情も30秒ほどで平静に戻った。
二冠の伊藤と永世七冠の羽生。2回戦注目の対決である。3年前の七番勝負で藤井聡太竜王に屈辱の4連敗を喫した伊藤にとって、竜王戦のリベンジは現在最大の目標だろう。一方、日本将棋連盟の会長職を離れ、選手一本の道を選んだ羽生にとってもこの勝負は大きい。今の伊藤に勝てば、その健在を大きくアピールすることができる。
初手▲2六歩以下は相掛かりの駒組みが静かに進む。「角換わりの序盤は一歩でも本線を踏み外すとすぐに転落する厳しさがあるが、相掛かりの序盤はある程度、人間的な好みを出すことができる。両者の思惑が一致して本局の序盤は、ある前例をたどります」と本局解説の深浦康市九段は述べた。前例とは何か?(鈴木宏彦)
第2譜
△3三金 …
▲6八玉 2 △9四歩 3
▲3六銀 40 △6三銀 1
▲2五銀 … △5四銀 1
▲1五歩 1 △同 歩 1
▲3四銀 … △同 金 …
▲1二歩 … △6五桂 1
▲6六歩 … △3二銀 6
▲1一歩成…
5時間△0・28分▲1・07分49手
◇…リスペクト
両者は3年ほど前から一対一の研究会(VS)をやっている。インターネットテレビの企画で棋士の団体戦が行われたとき、両者が同チームになったのを機に羽生が声をかけてVSが始まったと言う。「瞬時に局面の急所をとらえる羽生先生の感覚はとても勉強になります」と伊藤は語る。
後手は▲3四銀を防いで△3三金。そのあと先手からは▲1五歩△同歩▲1二歩△同香▲3四銀△同金▲2三飛成の狙い筋が常にある。そうなれば先手成功だが、本譜△3三金にすぐ▲1五歩△同歩▲1二歩△同香▲3四銀は、以下△2四金▲2三銀成に△8八角成▲同銀△2七歩と反撃されて先手が悪い(後手は歩を3連打できる)。そこで先手は手順と形を少し変えて実戦の攻めを決行した。今度▲3四銀に△2四金は後手に2歩しかないので▲2三銀成が成立する。
指了図までの進行は2025年9月の伊藤(先手)と藤井竜王の第73期王座戦五番勝負第3局と同じ。そこで先手を持って勝った伊藤が本局は後手を持って指している。
「羽生さんはあえて前例通りの進行を選んだ。意図はともかく、まず相手の伊藤さんに対するリスペクトを感じました」と深浦九段は述べた。(鈴木宏彦)































