【特集】空手に合気道、心身鍛える護身道部…多摩大目黒

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空手と合気道を学ぶ「護身道部」
空手と合気道を学ぶ「護身道部」
黙想で神経を集中させる
黙想で神経を集中させる

 多摩大学目黒中学校・高等学校(東京都目黒区)には、空手と合気道を学ぶ「護身道部」がある。部員は男女あわせて約40人。目黒駅から徒歩圏内の校舎内オープンスペースで週3回、中学生と高校生が一緒に汗を流す。熱のこもった稽古を見学した。

空手と合気道を同じ空間で

 午後4時、白い道着に身を包んだ顧問の井上卓三先生が姿を現すと、すぐに練習が始まった。先生と向き合う形で部員たちが正座し、こぶしを床につけてまず一礼。そのまま体を起こし、こぶしを膝の上にすべらせて静かに黙想する。呼吸がひとつになったところで全員がすっと立ち、「ウォー」という掛け声とともに気合を入れた。

 空手も合気道も、同じ空間で稽古を行うのが“多摩大目黒流”。最初と最後の「あいさつ」以外、練習内容はもちろん別々だが、井上先生が両方に目配りをきかせ、行ったり来たりしながら指導しているのだ。そもそも先生自身が、高校時代から空手の道場通いを始め、大学時代には合気道部の主将をつとめた本格派。しかも、合気道の創始者・植芝盛平(1883~1969)を初代とする「植芝家」で内弟子修行を積み、海外で普及活動を行った経験を持つ。その後、縁あって多摩大学目黒中学校・高等学校の体育教師になり、やがて護身道部を創設した。今からざっと10年前のことだ。

 「柔道や剣道を含めて、最近は武道を一度もやったことのない子がほとんどです。礼節や規律を大切にしながら、精神と肉体を鍛える  自分の経験を生かして、そういう場をつくれないかと思ったのです。2012年度から中学1、2年生で必修化されたこともあり、「『体を動かすきっかけになれば』ということで入部するケースが増えた気がします」

鋭い突き、力強い上段蹴り

腕をまっすぐ突き出す
腕をまっすぐ突き出す

 この日は空手は通常の稽古、合気道のほうは生徒たちがどれだけ基本を身につけたか、実技を通して確認するメニューだった。まずは空手の練習から。

 先程の「気合」を入れた陣形のまま、部員たちがパンチを打つように腕を正面に交互に繰り出し、足を高く蹴り上げ始めた。動きはあくまでも素早く力強い。続いて2人1組になって、本格的な蹴りの練習。1人が小さなマット状の防具を持ち、それを目がけて相方が蹴る。中には180度近く開脚し、高い位置でマットをとらえている生徒もいる。上段蹴りというのだそうだ。空を切る鋭い音、弧を描くつま先の線が美しい。帯を見ると黒帯。主将をつとめる池田悠二君(高2)だった。

井上卓三先生
井上卓三先生
力強く蹴り上げて
力強く蹴り上げて

かっこいい上級生にあこがれて

 井上先生によると、部員のうち黒帯は現在2人。黒の次が茶帯で、緑、紫、青、オレンジ、白……といった具合に続く。ただ、練習は同じレベル同士だけでやっているわけではなく、相手をどんどん変えながら行われる。実際、池田君や、同じく黒帯の副将・筒井魁汰君(高2)が、白帯の中学生と組むこともある。その場合はすべてキャリアのある側が加減しているのだという。

 中1の穂村英介君に話を聞くと、「強くてかっこいい先輩たちにあこがれて入部しました。ものすごく強いのに、僕たちにはやさしく、ていねいに教えてくれる。とても尊敬しています。基礎から一つひとつやって、僕も強くなりたいです」とのこと。体育会系だから、上下関係に厳しいのかと思ったら、さにあらず。本当に強い人は、他人に対して優しくふるまえるものなのだ、ということを改めて教えられた気がした。

 続いて、身長の4分の3ぐらいの大型マットを使った稽古や素手での組み合い、ボクシングのようなグローブと頭部の防具をつけての打ち合いなどが行われ、最後は柔軟運動やベンチプレス、縄跳びなどで締めくくった。驚いたのは池田君、筒井君がそろって柔軟な体の持ち主だったことだ。180度開脚して、胸をべったり床へ。空手では思わぬけがを防ぐためにも、柔軟な体を持つことが大切なのだという。

大型マットで真剣勝負
大型マットで真剣勝負
筋トレも自発的に
筋トレも自発的に
みんな身体もやわらかい!
みんな身体もやわらかい!

女子が多い合気道

合気道では、女子が体の大きな男子を投げる
合気道では、女子が体の大きな男子を投げる

 合気道のほうは、と見ると、空手の面々がアップしている間にマットを敷き詰め、前回り受け身という変形の前回りを繰り返していた。空手をやっている女子は中学2年の1人だけなのに対し、合気道のほうはむしろ女子のほうが多いくらいだ。

 前回りが終わると、2人ずつ組になり、さまざまな形をつくって相手を投げたり、腹ばいで押さえこんだり。強さを競うというより、正しい呼吸や態勢、タイミングを確認しながら、効率的な体の動き方を探っているように見える。投げる場合も力任せではなく、相手の勢いを利用しているので、強い力の持ち主でなくても大丈夫だという。合気道では、女子が自分より、体の大きな男子を投げる光景も珍しくないのだ。この日は技の確認ということで、井上先生がみずから相手をし、一つひとつ、ていねいに指導していた。

二束の草鞋で活躍する部員も

締めも正座で礼儀正しく
締めも正座で礼儀正しく

 体育会系とはいえ、部員一人ひとりの事情を最大限くみとってくれるのも“多摩大目黒流”。たとえば、豊岡大輝君(高2)はこの日、「予備校に行くので、今日はこれで引き上げさせてください」と先生に断った上で、1時間ほどで練習を切り上げた。豊岡君の場合、高校1年まではサッカー部でフルに活躍していたが、受験勉強のために退部。2年から、護身道部に加わり、週3回活動している。「受験勉強は大切だけど、体も動かしたい。ただ、両立できなければサッカー部をやめた意味がない。それで、アメリカで子ども時代にやったことのある空手をと思いました。集中力がつきましたし、信念を持って打ちこむことの大切さを学び、人間的にも成長できた気がします。まだ白帯ですが、黒帯や緑帯の同級生に挑むのが楽しいです」と、さわやかな笑顔を見せた。

 また、合気道に取り組む堀川和希君(高2)は部活動の一方で、生徒会長の重責も果たしている。「大変だな、きついなと思うのと同じくらい、楽しい部分がある。個人戦だから、すべてが自分の責任。筋力だけでなく、精神力を養えるのが魅力的だと思います」と話す。大原徹也君(高2)は漫画部部長との兼任。元々はゲーム好きで、運動が苦手な典型的なインドア派だったが、友人に誘われて中2から空手を始め、「人生観が変わった」という。「運動する楽しさを知りました。それまですごく太っていたんですが、たくさんあった(ぜい)肉が筋肉に変わりました。武道は自分との戦い。何十年もやって身に付くものだと思うので、これからも続けていければ」と汗をふきながら、語ってくれた。

 (文と写真:読売受験サポート編集部)

 多摩大学目黒中学校・高等学校について、詳しく知りたい方はこちら

 掲載日:2013年3月9日

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