【特集】「つらさ」をあえて体験して理解を深めた新潟宿泊授業…足立学園

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  足立学園中学校・高等学校 (東京都足立区)は昨年5月、新潟県新発田市で高1生を対象とする2泊3日の校外宿泊授業を実施した。メインの行事である防災キャンプでは、非常食による食事や防災用マットでの就寝といった避難生活を想定した体験を行い、防災意識を高めた。また、食の大切さを実感できる田植え体験などもあり、五感を動員したプログラムに生徒たちは大いに刺激を受けていた。

非常食の食事や防災用マットでの就寝を体験

「校外授業を、社会に貢献できる人間形成の一助としたい」と語る高井副校長
「校外授業を、社会に貢献できる人間形成の一助としたい」と語る高井副校長

 同校は毎年5月、高1生を対象として自然の中での校外宿泊授業を実施してきた。これまでに山梨県の西湖、福島県の喜多方など各地で実施してきたが、昨年は初めて、新潟県新発田市で行った。

 「2011年の東日本大震災、2019年の台風19号による水害の際、本校が避難所となったこともあり、防災教育を充実させる必要性を感じていました。今回、新発田市が地元で実施してきた防災キャンプのプログラムを本校向けにアレンジしてくれたことから、校外授業の実施地とさせていただきました」と、高井俊秀高校副校長は語る。

 日程は昨年5月7~9日と同8~10日で、340人の生徒たちは、2グループに分かれて参加した。いずれも初日は新幹線で新潟に向かい、廃校を利用した施設の体育館で防災キャンプを体験。2日目は田植え体験と、市内を歩きながらクイズの答えを探す謎解きゲームを楽しんだ。3日目には、日産自動車や、農業機械メーカー「クボタ」の社員らによる講演を聴き、電気自動車や自動運転農業機械などが果たす役割について学んだ。

防災キャンプで非常食を用意する生徒たち
防災キャンプで非常食を用意する生徒たち

 初日の防災キャンプでは、新潟県で防災教育の普及に努めているNPO法人「ふるさと未来創造堂」のスタッフを指導員とし、生徒たちは6、7人の班を作って段ボールでベッドを組み立てたり、新聞紙でスリッパを作ったりした。また、「水が使えない」「満足な食事ができない」などの避難生活での課題についても、各班内で話し合った。

 食事も、昼は、乾パンと温めずに食べられるレトルトカレーで済ませ、夜はカセットコンロを使って米を炊き、非常用缶詰をおかずに食べるなど、非常時の食事を体験。その後、防災用マットで、毛布をかぶって就寝した。新発田市は、5月でも夜は寒く感じられるほどだったというが、避難生活を想定しての体験であるため、暖房はあえて使わなかった。

身近なものが非常時に役立つことを理解

「避難時に起こることをリアルに体験し、防災に対する意識が高まったようです」と話す岩佐教諭
「避難時に起こることをリアルに体験し、防災に対する意識が高まったようです」と話す岩佐教諭

 同行した学年主任の岩佐隆司教諭は、「5月の高1の校外授業は、新しいクラスメートと打ち解けるための行事となっています。しかし、食事は粗末で、暖房もなく、硬いベッドで寝るとなると、明るく楽しい思い出を作るというわけにはいきません。新しい仲間と慣れない環境の中でつらい思いをすることになるのではないかと最初は危惧しました」と率直に明かす。

 しかし、生徒たちは思いのほか明るく前向きだったという。「朝食もパンとおにぎりだけでしたが、班の中で互いに仲良く分け合っていました。段ボールや新聞紙など、身近なものが非常時に役立つということに興味を感じたようでした。何より、避難時に起こることをリアルに体験し、『非常食は常に用意しておかないといけない』といった、防災に対する意識が高まったようです」

 参加した高1生たちにも話を聞いた。中本 こうすけ 君は、「思った以上に本格的な体験でした」と振り返る。「僕たちが経験したのは一晩だけでしたが、あれが何日も続くとなると、精神的に厳しいと思います。少しでも明るく過ごせる方法を考えておかなければと感じました」

 馬場 きゅう 君は、家に帰って父親に、新聞紙のスリッパを作って見せたという。「段ボールのベッドは思ったよりも頑丈で、体の大きな仲間が寝ても壊れたりしませんでした。やはり実際にやってみないと分からないことが多いですね」

農業についてより深く理解する機会となった田植え体験
農業についてより深く理解する機会となった田植え体験

 なお、宿泊授業2日目の田植え体験も、2人にとって貴重な機会となった。長靴を履いて田んぼに入り、泥だらけになって一株一株苗を植えていくのは、思っていたよりも大変だと実感したそうだ。中本君は、「家のプランターで田植えをしてみたことがあるのですが、実際の田んぼでの経験はまったく異なりました。植えた後、米を育てて刈り取りをするという作業が続くことを考えると、農業がいかに大変な仕事であるかが分かりました」と言う。馬場君は、この時の田植えや、その後に収穫米を9月の文化祭で販売した経験などから農業に興味を持つようになり、大学で農業経済学を学んでみたいと考えるようになった。「祖母の家が農家で畑仕事を手伝ったことがあり、農業には親しみがあります。流通や経営など、農業のあり方を幅広く学んでみたいと思っています」

 岩佐主任は、「食べ物という、身の回りに当たり前のようにあるものが、一つ一つの努力を積み重ねて生み出されていくのだと学ぶことができました。仲間と協力し合いながらそれを体験し、人としての成長が得られたと感じています」と、満足そうに話した。

防災検定の受検や自前の防災キャンプ開催も

避難生活を想定して防災用マットで就寝する生徒たち
避難生活を想定して防災用マットで就寝する生徒たち

 同校は、こうした校外授業だけでなく、さまざまな機会に防災教育を行っている。中高のクラスに1人ずつ置いている「自衛少年消防隊」もその一つ。「2011年に教職員による自衛消防訓練を開始し、2年後に『自衛消防隊』という組織にしました。同時に、生徒による『自衛少年消防隊』をたち上げ、初期消火や救命活動の訓練を年10回程度実施しています」と高井副校長は説明する。彼らは東京消防庁千住消防署の指導を受け、全校避難訓練の際に先頭に立って活動しているそうだ。

 今後は、校外宿泊授業や自衛少年消防隊での経験を生かして、防災教育推進協会が主催する防災検定に学校としてチャレンジすることや、防災キャンプを自校で行うことも検討しているという。

 同校は、26年度も新発田市での高1校外授業を行う予定だ。「誠実で強くたくましく、優秀で人の役に立ち、最後までやりとげるという本校の建学の精神『質実剛健・有為敢闘』につながる校外授業となりました。これを継続し、社会に貢献できる人間形成の一助としたいと考えています」と、高井副校長は抱負を語った。

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:足立学園中学校・高等学校)

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