[就活ON]eスポーツで障害者支援…加藤大貴 障害者eスポーツ事業会社「ePARA」代表

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 思わぬ出来事が、新たな生き方のきっかけになることもある。国家公務員の裁判所職員だった加藤大貴さん(41)は、祖母が認知症を発症したことを機に福祉の世界に飛び込み、やがてeスポーツで障害者支援を行う会社を設立した。これまでの歩みと、学生へのアドバイスを聞いた。

夢破れ途方に

「うまくいかなくても、熱中すれば突破口が開ける」と語る加藤さん(2日、東京都港区で)=園田寛志郎撮影
「うまくいかなくても、熱中すれば突破口が開ける」と語る加藤さん(2日、東京都港区で)=園田寛志郎撮影

 高校生の頃、将来は弁護士になろうと決めました。起業を目指していた友人がおり、彼が困ったときに法律の力で守りたいと思ったのです。中央大法学部と法政大法科大学院で計7年間、勉強に打ち込みました。しかし司法試験のハードルは高く、3回挑戦しましたが不合格。夢が絶たれ、途方に暮れました。

裁判所書記官研修中、同期とギョーザパーティー(2014年、右から3人目が加藤さん)
裁判所書記官研修中、同期とギョーザパーティー(2014年、右から3人目が加藤さん)

 この時、既に29歳。社会人として活躍している同級生を見て焦りました。「自分も仕事をしなければ。せめて司法に携わろう」。そして見つけた仕事が裁判所職員でした。採用試験に合格し、2011年11月に東京地裁に入所。会社法の専門部署で書記官を補佐する事務官を務め、14年には書記官になりました。書記官は法廷での発言を記録する仕事で、責任の重さと、やりがいを感じました。

 その頃、祖母が認知症とアルコール依存症を併発しました。世話をする両親が疲弊していく姿を見て、判断能力が衰えた人の財産を管理する「成年後見人」が必要だと感じました。調べてみると、認知症患者約600万人のうち、成年後見制度を活用しているのは約20万人。制度を広め、活用する人を支援したいと思い、勤務の傍ら、18年12月に職場の同僚らとNPO法人「市民後見支援協会」を設立。副代表に就きました。

 NPOを始めてみると、本腰を入れて取り組みたい気持ちが強くなり、成年後見制度を利用する人をサポートする社会福祉協議会への転職を決意しました。それには家族の理解が欠かせません。連日、将来計画をまとめた資料で妻に説明し、納得してもらいました。

就労助ける

 7年にわたる国家公務員生活を終え、19年4月に東京都の品川区社会福祉協議会に入りました。成年後見制度を活用する人のサポート業務に就き、制度を利用するために必要な手続きの支援などにあたりました。

今年5月に開催した障害者eスポーツ大会。車いすや全盲など様々な障害者が参加して盛り上がった(最前列右端が加藤さん)
今年5月に開催した障害者eスポーツ大会。車いすや全盲など様々な障害者が参加して盛り上がった(最前列右端が加藤さん)

 その年の11月、公務員時代から続けているNPOで、障害者の就労支援を目的とした初のeスポーツ大会を東京都内で開催しました。eスポーツは参加者同士がコンピューターゲームで対戦する競技で、障害者にも人気があります。会場には障害者雇用に関心のある企業に来てもらいました。大会で集中力や社交性を見せる障害者の姿は、企業にとって魅力的な人材に映ります。約20人の参加者のうち3人の就職につながり、「自分のやるべきことはこれだ」と実感しました。

 それから間もなく、障害者の就労支援やイベント運営を行う「ePARA」を設立し、様々な障害者eスポーツ大会を開催してきました。全盲の選手が格闘ゲームから出るわずかな音を聞き逃さず、目の見える選手を相手に1勝を挙げた時は、感動して泣きそうになったこともあります。会社設立からこれまでに約10人の障害者雇用と、延べ50人の短期就労を実現しました。

 21年4月には、仮想現実(VR)を使った職場見学や仕事体験などができる障害者向けの就職イベントをオンラインで開催しました。今後も新しい取り組みに挑戦していきたいです。

 学生のみなさんは、何か一つ打ち込めることを見つけてほしいと思います。私にとってそれは法律の勉強で、試験には失敗しましたが、身に付けた忍耐力は人生に生きています。若いうちにした努力は、やりたいことが見つかった時に役立つはずです。もし、障害者支援に関心があれば、ePARAのインターンシップ(就業体験)に参加してください。大会運営の補助などを通じて、障害者雇用の課題を考える機会になるでしょう。(聞き手・平出正吾)

中高生時代 ゲームに熱中

  かとう・だいき  1981年、愛知県生まれ。中高生時代は格闘ゲームに熱中し、ゲームセンターに入り浸っていた。中央大学法学部への進学を機に上京し、2005年に法政大学法科大学院に入学。修了後、司法試験に挑戦したが合格できず、裁判所職員採用試験を受けて合格。11年11月から19年3月まで東京地裁で書記官などを務めた。19年4月、品川区社会福祉協議会で働き始め、21年3月に退職するまで成年後見制度の支援を担当。20年1月に障害者の就労支援などを行う企業「ePARA」を設立し、代表に就く。妻と長男、長女との4人暮らし。埼玉県在住。日曜夜の楽しみは晩酌で、好きなお酒はビールと芋焼酎。

アイデアに自信

 イベントを盛り上げるため、面白いアイデアを考えるのが得意で、通勤中もよく頭の中で企画を考えています。いい案がよく出るのは、心を無にしている皿洗い中。アイデアがひらめいたときは、つい気持ちが前のめりになって突っ走り、仲間に止められることも。うまく支えてくれる周囲に感謝しています。

雇用は増加傾向

 民間企業で雇用される障害者は増加傾向にある。厚生労働省の調査によると、2021年は約59万人で、10年前の約36万人から約23万人増えた。

 障害者雇用の拡大は国を挙げて推進しており、障害者雇用促進法では、一定以上の規模の企業に全従業員の2.3%を障害者とするよう義務づけ、未達成の企業には原則、不足人数1人につき月5万円の納付金を課している。

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3563929 0 PEOPLE 2022/11/28 05:00:00 2022/11/30 19:45:40 2022/11/30 19:45:40 /media/2022/11/20221127-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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