企業が仕掛けるユニーク選考…「実績」勝負や通年採用、麻雀の腕や留年も評価
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学生優位の「売り手市場」の中、優秀な人材を確保しようと、企業の採用手法は多様化している。エントリーシートや通常の面接では測りきれない能力を見極めようとしたり、学生が自分の都合に合わせて内定や入社時期を変更できたりするユニークな選考を紹介する。(松本将統)
日本一の実績で応募ができる「AO日本一採用」…ホリプロ【エンタメ】
多数のタレントが所属する大手芸能事務所。「AO」は「あっ!と驚く」の意味で、日本でナンバー1となった実績を持つ学生が応募できる。ジャンルは問わない。
大学ボート日本一、チーム支えた人間性アピール…岩崎かえでさん(25)

立教大で体育会のボート部に所属し、2年生の時にチームが学生日本一に輝きました。毎朝4時に起床し、練習に打ち込む日々。もともとテレビやお笑いが好きで、エンタメ業界に興味がありました。一方で、ボートの練習しかしてこなかったことに引け目も感じていました。そんな時に知ったのがAO日本一採用です。日本一を目指した頑張りをストレートに評価してもらえるのではないかと思いました。ただ、応募者は全員が「日本一」です。どうすれば他の学生と違いを出せるか。私はボートの上では誰よりも元気で、ムードメーカーを自負していました。スポーツの技術より、日本一のチームを支えた人間性をアピールしたことが内定につながったと思います。
現在はプロダクション2部に所属し、お笑いコンビ「さまぁ~ず」などのマネジャーを務めています。早朝から収録現場に同行し、終わりが日付をまたぐこともありますが、ボートで培った体力は大きな支えです。さまぁ~ずの単独ライブでは、グッズの内容や舞台のセットについて当日まで多くの関係者と打ち合わせます。これも日本一に向け、大会までの日数を逆算しながらトレーニングに励んだスケジュールの管理能力が生きていると感じます。
好きでやってきたことが、気付かぬところで役に立っています。学生時代は好きなことに夢中になってください。好きなことに打ち込む学生は採用担当者にも輝いて映るはずです。
AO日本一の採用実績

・釣りの世界記録保持者(=写真)
プロダクション1部。俳優のマネジャー
・ラクロス全日本選手権大会女子優勝者
タレントの出演番組や作品を広報する宣伝部

人事部 岡部かな子さん(28)からひと言

AO日本一採用の選考は2016年卒採用から導入しました。内定は毎年1~2人程度で、これまでに約10人が入社しています。応募者の日本一ジャンルは、ディベートや一輪車、アイドルのコピーダンスなど多岐にわたります。採用は総合的に判断されますが、1次面接では、採用責任者に1対1で、日本一の経験を存分にアピールできる機会を設けています。
ホリプロは自ら動き、ゼロからイチを生み出す人材を求めています。日本一の過程で得た経験や知識、自信を生かしてください。
(写真はいずれもホリプロ提供)
いつでも受け付ける独自の「通年採用」…ファーストリテイリング【アパレル】
「ユニクロ」のブランドで知られる衣料品大手。2013年入社から独自の通年採用を導入した。

いつでも
世界で活躍する「グローバルリーダー候補」は3月と9月に入社する。入社時期に合わせた応募時期の目安はあるが、1年中いつでも受け付けている。選考年度が変われば再チャレンジができる。
誰でも
大学・大学院や専門学校などに在籍中の学生と、卒業3年以内の人が対象。日本語能力が一定以上あれば国籍も問わない。1年生で内定を得てから、海外留学やゼミの研究に専念することも可能。
最終面接から
最終面接の前段階である「人事面接」を通過すると「FR(ファーストリテイリング)パスポート」を得られる。3年以内なら最終面接で落ちても、他社に就職しても、最終面接から選考を受け直せる。

人事部新卒採用チーム リーダー 加藤弘樹さん(37)からひと言
自分の人生のハンドルは自分で握り、志を表現できる学生を求めています。通年採用は自分にふさわしい仕事を考えるチャンスを増やし、主体的に、自由に応募できるようにしています。
例年1、2年生で内定を得る学生が10~20人います。内定後に本部や店舗でインターンシップ(就業体験)をしたり、会社が用意する海外渡航型プログラムに参加したりする学生もいます。採用日程に縛られず、仕事を見極めることで、入社後のミスマッチは生じにくくなります。
応募者の作品やプロジェクトで「実績採用」…チームラボ【デジタルアート制作】
テクノロジーやデザイン、サイエンスなどの専門家が集まるアート集団。
応募者が実際に生み出した作品やプロジェクトの「実績」を通じ、技術力や表現力を評価する。これまでにウェブサイトのデザインや自作ロボット、アニメーション作品などが提出され、質や動作精度、精細さなどが審査された。採用担当者は「技術や時間を注ぎ込んだ作品は、何よりもその人を表す。多様な専門性を持つ人を発掘したい」と話す。
ポジティブに「留年採用」…東急エージェンシー【広告】
新聞やテレビ、ネットなど様々な媒体の広告や、イベントなどを販売・企画。
留年を趣味やアルバイト、サークル活動などに夢中になりすぎた結果と捉え、その情熱や行動力を評価する選考。応募資格は留年、浪人、休学などの経験者。やり遂げたいことのために自ら留年を選んだ内定者の入社を1年延期する「留年パスポート」という仕組みもある。
プロ雀士と勝負で一部選考過程免除の「
麻雀
採用」…スターティア【情報機器販売】

コピー機や複合機などの販売やメンテナンスなどを手がける。
社員やプロ雀士とマージャンで勝負し、成績により一部の選考過程を免除する。1位はいきなり最終面接から。採用担当者は「駆け引きや決断力などマージャンの能力はビジネスセンスに通じる。また、変わった選考に飛び込める勇気を持った学生と出会いたい」と狙いを明かす。通常の採用も行うが、マージャン採用組から営業成績のトップや、昇進の最短記録を更新した社員が誕生している。

企業の採用活動に詳しい大学ジャーナリスト 石渡嶺司さん(50)
企業がユニークな選考方法を採るのは、通常の面接では見えにくい学生の人間性をより重視しようと考えているからだ。ちょっと変わった経歴を持つ学生にアプローチしやすくなるメリットがある。中小企業やベンチャー企業にとっては、知名度の向上につながるだろう。ただ、“フツー”の学生にとっては通常の選考よりもハードルは高い。就活では、珍しい経験や希少な体験そのものではなく、そこから何を学んだのかが問われることを忘れてはいけない。




























