留学・研修・資金援助…企業が工夫を凝らし従業員を支援、ライフステージで変化する福利厚生
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結婚や子育て、介護などのライフイベントに応じて、仕事との両立を支えたり、新たな挑戦を後押ししたりする制度を整える企業が増えています。
人手不足が深刻になる中、社員が長く働き続けられるようにするのが狙いです。制度を通して社員を大切にする企業かどうかを判断することもできます。(新美舞)

Co育てMonth…食品メーカー「江崎グリコ」(大阪市)
生後6か月以内の子どもを持つ社員は1か月間の有給休暇(育休)取得を義務づけ

〈担当者の声〉グループ広報部 木下直也さん(40)

2020年に新設しました。「Co育て」は、親たちが和気あいあいと「伝え合い」(Communication)、上手に「協力」(Cooperation)しながら、「一緒に子どもを育てる」(Coparenting)ことを表しています。社員が気兼ねなく休めるよう、周囲の社員が代わりに引き受けた業務をきちんと評価したり、上長が保育園で半日の保育体験をして育児の大変さを学ぶ機会を設けたりしています。制度の導入以降は、男性の育休取得率は100%。育休に入る前に仕事の無駄や改善点を洗い出すことで、生産性の向上にもつながっています。
ママメンター…家具・インテリア小売り「かねたや家具店」(千葉市)
産休・育休を取得予定の女性社員に、主に復帰2、3年の先輩ママ社員が助言者としてつく
〈制度利用者の声〉幕張新都心店営業事務 吉野郁恵さん(45)

次女(現在3歳)を妊娠した時にメンターがつきました。他店舗で育休から復帰して4年目の同期社員でした。育休前から復帰後1年までの間に6回ほど面談し、不安やストレスについて相談に乗ってもらいました。育休中にお客さまとの契約方法が大幅に変わったのですが、メンターからの情報で「浦島太郎」にならずに済みました。
長女と長男の出産時は仕事と育児の両立を相談できる社員がいなかったので、メンターの存在は心強かったです。
FLASH…人材サービス会社「パーソルキャリア」(東京都港区)
Family(育児、介護など)、Learning(留学、通学)、Avocation(趣味、余暇)、Social(ボランティアなどの社会活動、地域活動)、Health(治療、療養)と仕事を両立させるために、時短勤務や休職をすることができる
〈制度利用者の声〉グローバルキャリア支援グループ 広瀬優花さん(30)

雇用や地方創生に関する公共政策に興味があります。
今年4月に制度を使って月間の就業時間を4分の3に減らし、京都大学大学院に入学しました。若い同級生の考えを聞けたり、同じ講義をとる市議や府議と知り合いになったりと、講義内容以外の収穫もあります。
ペースをつかめた7月からは就業時間を元に戻しました。
状況に応じて柔軟に使えるのも良さです。将来は海外の大学でも学びたいと考えています。
サントリー大学…飲料メーカー「サントリーホールディングス」(大阪市)
社内の人材育成プログラムの総称。80か国超のグループ社員約4万人が利用できる
〈担当者の声〉サントリー大学課長 吉井晶子さん(45)

企業理念の解説やITスキル研修など、約8万4000の講座を提供しています。オンライン講座は「デジタル学部」「グローバル学部」などに分類し、2023年に「100年キャリア学部」を新設しました。人生100年時代、特に40代以上の社員が、改めてやりたいことを考えるきっかけにしようと、社内ベンチャーに取り組む社員のインタビューなどを紹介しています。ミドル、シニア層が学び続ける姿は、若い社員への刺激にもなります。
親孝行支援…住宅メーカー「大和ハウス工業」(大阪市)
介護が必要な親を持つ社員の帰省旅費を補助する。全国転勤がある総合職が対象で、家族の旅費にも使える
〈制度利用者の声〉建築技術研究所 建築材料施工グループ長 森貴久さん(49)

奈良県の建築技術研究所で、施工の一部を担うロボットの開発などをしています。鹿児島県に住む88歳の実母が要介護認定を受けた5年前から毎年、制度を年4回フルに利用して帰省しています。母が急に熱を出し病院に搬送された時も、ためらうことなく駆けつけられました。
50歳代のキャリア研修…地方銀行「阿波銀行」(徳島市)
定年を65歳に延長。50歳と58歳時にこれまでの活躍を発表し合い、意欲を高める
〈研修参加者の声〉市場支店長
豆成
博正さん(60)

58歳の研修では、キャリアを振り返り、参加者同士で経験からの学びや培った能力を認め合いました。「今後も営業の現場にいたい」「阿波銀行の理念に基づく営業を若手に継承したい」という具体的な目標ができました。
若手に学び続ける姿勢を見せなければと考え、IT関連の資格取得に向けた勉強も始めました。
周囲の社会人から助言してもらう
キャリタスリサーチ上席研究員 武井房子さん(55)

来春卒業予定の大学生らを対象に行った調査では、志望企業を考える時に最も知りたい情報として、「福利厚生」を挙げた学生が6割を占めた。ただ、学生は家賃補助など目先を気にしがちだ。保護者ら周囲の社会人に、ライフイベントに応じて、どんな制度があると働きやすいか、助言してもらおう。
また、OB・OG訪問などで社員に直接、制度の利用状況を聞くことも大切だ。実際に利用されている状況を確かめることで、社員を大切にし、成長を後押しする企業かどうかがわかる。
福利厚生は大事だが、企業選びは、やりがいを感じる仕事内容を基準にするという大前提は、忘れないでほしい。
制度やデータは、いずれも2025年8月4日現在のものです。


























