生成AIでは代われない似顔絵捜査の神髄…一瞬見た証言から素早く描く「ぼんやりとした印象の絵」、犯人像の絞り込みに
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事件の目撃者から犯人の特徴を聞き取り、似顔絵を描く「似顔絵捜査」。紙と鉛筆だけで犯人像を浮かび上がらせ、数々の検挙につなげてきた捜査手法だ。現代なら生成AIを使えばと考えてしまうが、そうはいかないらしい。愛媛県警に受け継がれる技術の神髄に触れたくて、12日に松前町の県警察学校であった講習会に参加した。(氷見優衣)
「顔に十字線を引き、目や鼻、口の位置をざっと決めると描きやすい。配置と角度が異なるだけで印象が変わってくる」
講習会で14人の若手警察官らに対し、県警鑑識課で「似顔絵指導官」を務める林田聡警部補(51)が、似顔絵を描く際、顔全体の特徴、バランスを把握する大切さを丁寧に説明した。
目撃者は、犯人を数秒しか見ていないことが多く、何となく顔の印象を覚えていても、目鼻の形まで記憶している人はほとんどいないという。そのため聞き取る際は相手の記憶を呼び起こし、どう言葉として引き出せるかが鍵になる。
顔は面長か、丸顔か。眉毛は太いか、薄いか。特徴的な要素を可能な限り拾い上げ、その証言通りに素早く描き出す。この似顔絵を目撃者の記憶と照らし合わせ、何度も修整し、犯人の実像に少しでも近づけられるよう仕上げていく。
デジタル全盛の今、生成AIにキーワードを入力すれば簡単に似顔絵ができるが、林田警部補は「捜査では『~っぽい』という、ぼんやりとした印象の絵であることが重要。一瞬しか見ていない目撃者の証言から写真のようにリアルな絵になると、幅を持って犯人像を絞り込むことが難しくなる」と明かす。
容疑者の合成写真を作り出し、かつては最先端と注目を集めた捜査手法「モンタージュ写真」も、同じような理由で現在は使われなくなったという。
手描きの似顔絵はアナログだが、捜査現場で存在感を発揮する。県警鑑識課によると、昨年は窃盗や暴行などの事件で38枚が作成され、このうち11件で捜査の進展に役立ったという。

情報素早く形に
講習会では参加者がペアを組み、互いの似顔絵を描いた。新聞記者1年目の私(23)も鑑識課の石丸晋警部補(60)と向き合った。
似顔絵を描くのは小学生以来。鉛筆を握り、どこから手をつけようかと迷う。印象的だった眼鏡から描き出したものの、その中に目を入れるとバランスが崩れてしまった。
悩んでいる様子を見かねたのか、石丸警部補が「似顔絵は時や場所を選ばず、紙と鉛筆があれば描ける。イメージが薄れて情報が上書きされる前に、とにかく素早く形にすることも大切」と助言してくれた。

こうして15分ほどで描き上げた作品は、少し漫画のようなタッチに。石丸警部補に見せると、「100点満点」と太鼓判。林田警部補からも「丸い輪郭と垂れ目の目元が表現できている」と高い評価をもらった。
情報を聞き取り、分かりやすく表現する似顔絵捜査の技術は、記者の仕事にも通じるところがあり、学ぶことが多かった。


























