[未来へ]<5>長寿復活へ琉球料理…体に優しい 祖先の知恵
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鮮やかな朱色で塗られた八角形の琉球漆器「

「季節の野菜や魚、海藻をふんだんに取り入れた琉球料理は、沖縄の人の健康をずっと支えてきたんです」。沖縄県読谷村の料理教室で、耳慣れない名前の料理の意味や作り方を生徒たちに丁寧に説明するのは、県が認定した琉球料理伝承人で管理栄養士の
琉球料理は、日本と中国を主な交易相手とした琉球王国(15~19世紀)で両国の影響を受けて発展した。中国皇帝の使者・
しかし、沖縄の食文化は、戦後の米統治下でステーキやハンバーガーなど脂質や塩分の多い食品が普及したことで急激に変化した。1980年に男女とも全国1位だった平均寿命は2020年に男性43位、女性16位となり、「長寿県」から一気に転落。食生活の変化が大きな要因とされた。
県外の短大を卒業後、管理栄養士として県内の病院に勤めていた伊是名さんは、生活習慣病で入院する患者の多さにがくぜんとした。「食べ物が体を作っているという意識が低すぎる。県民の食生活を改善し、長寿県を復活させたい」。病院勤務の傍ら、琉球料理研究家・松本嘉代子さん(83)の料理学院の門をたたいた。
「祖母と同じ味」 愛情も受け継ぐ
学んだのは、いかに伝統的な調理法が理にかなっているかということだった。
多くの料理が豚肉やカツオ節、昆布からだしを取る。素材のうまみを引き出すことで味が際立ち、使用する調味料が少なくて済む。油や砂糖が高価だった時代の知恵でもある。
「自己流ではなく、きちんとした調理法で作りなさい」。それが恩師の教えだ。
今あるレシピは、松本さんら先輩料理家たちの調査・研究によって作られたものだ。昆布の
1991年に独立して開いた料理教室では、先輩たちがつないだ教えを生徒にも伝えてきた。料理を作った生徒が「祖母と同じ味がする」と言ってくれた時、心の底からうれしいと思えた。「琉球料理は体に優しいだけでなく、祖先の愛情も受け継いでいる」
地元に伝わる調理法「土産土法」で
沖縄特産のニンジンやラッキョウなどの島野菜は、栄養素を豊富に含むものが多い。地元で消費する「地産地消」に加え、地元の土地に伝わる料理法で調理する「土産土法」に力を入れる。「料理も大事だけど、賢い生産者と消費者も大事」が持論。食育に携わる生産者を紹介する地元テレビ番組にも長年協力している。
オーガニックブームやSDGs(持続可能な開発目標)が注目されたこともあって、若い世代にも琉球料理や地元食材への関心が高まっていると感じる。
食生活の改善による「長寿県の復活」は、先の長い取り組みになるかもしれない。でも、この島で受け継がれてきた味と精神は、ともに活動してきたスタッフや若い世代の教え子にしっかりと伝わっている。
「私の代では難しくても、きっとあきらめずに続けてくれる」。いつの日か、地道な取り組みが実を結ぶ日を思い描いている。
運動不足、飲酒も影響
沖縄県の平均寿命の都道府県別順位が下がった原因は、食生活の乱れだけでなく、運動不足や飲酒慣行の問題も指摘されている。
車社会の沖縄では近距離でも車を利用する傾向がある。県の調査(2016年度)によると、成人の1日の歩数は男女ともに全国平均を下回り、特に男性は年々減少傾向にある。飲酒量も多く、「生活習慣病のリスクを高める量の飲酒」をしている人の割合は男性19.4%、女性10.9%で全国平均(男性13.9%、女性8.1%)を大きく上回った。県は「2040年に男女とも平均寿命日本一」を目標に掲げ、県民の健康づくりに力を入れているが、達成への道のりは険しい。


























