「筋トレはご飯を食べるのと一緒」杜の都で育む筋肉…東北大ボディビル部

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東北総局写真記者 永井秀典

 「米食えば でかくなるなり 増量期」「筋肉と和解せよ」。 (もり) の都・仙台の青葉山丘陵に広がる巨大な大学の一角に、目を引く言葉が並んでいた。「興味深い部活がある」と聞きつけて4月上旬、キャンパスに足を踏み入れた。そこにはひたむきに筋肉と向き合う、熱き学生たちの青春があった。

鏡の前でポーズを決める東北大ボディビル部の部員たち
鏡の前でポーズを決める東北大ボディビル部の部員たち

100人が切磋琢磨

 「もっと押せ」「あと1回いける」。東北大の川内キャンパス(仙台市青葉区)にあるトレーニングルームに (げき) が飛ぶ。屈強な部員たちが見るからに重そうなバーベルを持ち上げていた。1968年発足、半世紀以上の歴史を持つ「学友会ボディビル部」の部員たちである。

 学部1年生から大学院生まで、学部も学科も異なる約100人の部員が 切磋琢磨(せっさたくま) している。「自分を変えたい」「純粋に興味があった」など入部理由も様々。競技の特殊性ゆえ、ほぼ全員が初心者で入る珍しい部活である。フィットネスブームの影響か、近年の部員数は増加傾向だという。

ボディビルとパワーリフティング、どちらかを「専攻」

トレーニングルームには多くの器具が並ぶ
トレーニングルームには多くの器具が並ぶ

 部活では、全身の筋肉のダイナミックさ、美しさ、バランスなどを競い合う「ボディビル」と、バーベルを持ち上げ、その重さを競う「パワーリフティング」の二つの競技を行う。入部してしばらくすると、この二つの競技のどちらを専門にやっていくか、いわば「専攻」を決めることになる。部員は毎年9月頃に開催される全日本学生選手権(インカレ)への出場と入賞を目指して活動に取り組む。その実力は折り紙付きで、パワーリフティング部門で全国優勝を果たした部員もいる。

フォームを確かめながら練習に励む部員
フォームを確かめながら練習に励む部員

 驚くことに全体練習の時間は特に設けておらず、 各々(おのおの) 好きな時に練習に励むのだという。グループでトレーニングをする部員や、自分でコツコツやる部員などスタイルは様々。朝6時から夜中の12時まで使えるトレーニングルームには、授業の空き時間や授業終わりなどに部員が自主的に集まってくる。週5~6回来る部員も多いという。

増量期を経て、シビアな減量期へ

 それぞれがインカレに照準を合わせて体作りを進めていく。大会が終わった後の10月~翌年4月は「増量期」と言われる、いわばオフシーズン。ナーバスにならなくてもよい時期で、筋肉を増やすため週の大半は自分の食べたいものを食べる部員も多いという。

体に重りを結びつけて自らを追い込む部員
体に重りを結びつけて自らを追い込む部員

 4月以降は大会に向けた「減量期」で、追い込みのシーズンとなる。特に「ボディビル」を競技に選ぶ部員にとっては、筋肉を可能な限り残した上で脂肪だけを落とす必要があり、食事もカロリー制限をしながらのシビアなものになる。1日に摂取するカロリーと、消費するカロリーを考えながら減量をしていくが、1キロ・グラムの脂肪を落とすのには約7000キロ・カロリーを消費する必要があるそうだ。

 少ない摂取カロリーでこれまで通りのトレーニングをこなさなければならず、大会直前の8月頃からはトレーニングルームの雰囲気もピリピリしてくるのだという。「減量期は 些細(ささい) なことでイライラすることがあるので、その感情をぐっと抑えることが大事です」と主将の田島照英さん(21)が教えてくれた。

ストイックな主将、好きな筋肉は腹筋

 田島さんは、工学部機械知能・航空工学科の3年生で、放射線治療などの研究に励む傍ら、主将として約100人の部員を束ねる。栃木県出身で好きな筋肉は腹筋。高校時代は帰宅部だったが、自衛隊で戦闘機に乗ることを夢見て筋トレにいそしんだ。当初はボディビル部に入る気は全くなかったが、自分の筋肉を周りに見せたいという気持ちもあり、入学した春先に半袖、半ズボン姿でキャンパスを歩いていたところ、勧誘を受けた。取り組む競技は「ボディビル」だ。

主将を務める田島さん
主将を務める田島さん

 話を聞いていると、柔らかな語り口からは想像のつかないストイックさが垣間見えた。「もっとこうできたのではないか」と後悔することがないよう、自分の中の課題を修正しながら練習に臨んでいるそうだが、練習頻度は驚異の週7日、1日3時間ほど。感覚としては「筋トレはご飯を食べるのと一緒」だといい、日課の一つとなっているそうだ。

 そのストイックぶりは日々の食事にも表れている。脂っこいものを避け、糖質とたんぱく質を中心に摂取しているそうだ。糖質は筋トレをする上でのいわば「ガソリン」となり、たんぱく質は筋肉の「原料」となる。学食は 滅多(めった) に食べず、弁当を持参。メニューは鶏の胸肉と米、卵。夕食も同様のことがたびたびあるという。それでも「つらいとは感じない」と屈託のない笑顔で話してくれた。

 そんな田島さんの平均的な1日は以下の通りである。

9:00  1限開始

12:00  持参した弁当で昼食(鶏の胸肉、米、卵)

16:00  4限終了

16:30  トレーニング開始

19:00  トレーニング終了

20:00  帰宅。夕食に鶏の胸肉、米、卵

22:00  自宅で採点のアルバイト

24:00  就寝

季節に応じた「筋肉川柳」

 ストイックな部活の中で、部員の楽しみの一つとなっているのが川柳だ。路線バスなど交通量の多い道路に面した部室棟には、季節に応じた筋肉にまつわる川柳が掲示されている。部の存在を知ってもらおうと、先代の部員が始めたのだという。1か月に1回は更新することを心がけているが、アイデアが思い浮かばず滞る時期もある。

 主な名作は「プロテイン 床にこぼして 天の川」「まだ間に合う せい夜に備え トレせーや」「鍛えなきゃ いたずらするぞ パンプ筋」など。

季節に応じて掲示される様々な川柳(東北大ボディビル部提供)
季節に応じて掲示される様々な川柳(東北大ボディビル部提供)

 通行人が川柳をまじまじ見つめていると、部員一同喜びを感じるそうだ。部のSNSでも随時発信しており、反響を得ている。

顧問の教授は日本記録保持者

 部活の顧問を務める同大の鈴木教郎教授(未来科学技術共同研究センター・大学院医学系研究科)は研究者でありながら、部員たちから一目おかれる「パワーリフティング」の競技者でもある。鈴木教授の専門は酸素医学分野。体内に酸素を運ぶ赤血球に精通し、貧血治療やアンチドーピングなどの研究を進めている。

田島さんにトレーニングのアドバイスをする鈴木教授(右)
田島さんにトレーニングのアドバイスをする鈴木教授(右)

 大学時代はパワーリフティングに取り組んでいたが、卒業後は研究の道に進んだことで20年以上、競技から離れていた。転機が訪れたのは8年ほど前。自宅近くにジムができ、久しぶりにバーベルを持ち上げた時に「競技としてやりたい」と血が騒いだ。トレーニングを再開すると、3か月後の大会に自然と出場していたという。前任の顧問が異動になり、知り合いの部員から声を掛けられたこともあって顧問に就任。「学生と同じ大会に出ると、新鮮な気持ちになる」と笑顔をのぞかせる。

スーツを脱ぎ、バーベルを握る鈴木教授。競技者の顔つきに変わる
スーツを脱ぎ、バーベルを握る鈴木教授。競技者の顔つきに変わる

 モットーは「 怪我(けが) なく楽しくやること」。大学生から小学生まで3人の子供の父であり、仕事や家庭に支障をきたすようなことがあれば競技はやめると決めている。バーベルを握ると、どうしても長い時間やりたいという気持ちが湧き上がるが、週4~5日、30~40分程度の短時間でトレーニングを行う。

 日々の研究にも通ずるという「分析することが好き」な性分は効率的なトレーニングにもつながり、成果にも結びついている。50歳となった今も記録が伸び続け、昨年7月の全日本パワーリフティング選手権大会(50歳代の部、体重66キロ・グラム以下クラス)で日本記録を更新して優勝したのだ。今年7月には兵庫県で行われる国際大会に出場する。「せっかくの日本開催。楽しみつつ世界記録も狙っていけたら」と頂を見据えている。

 学生から教授まで、ひたむきに競技と向き合うその姿に、筆者の筋肉も次第に温まってきた。

プロフィル
永井秀典(ながい・ひでのり)
 1997年生まれ、千葉県出身。2020年入社。東京本社勤務を経て24年6月、東北総局(仙台市)に着任。写真記者として東北6県のニュース撮影などを担当。大学時代は「鉄道研究会」で鉄道を追う日々を過ごした。最近、自宅近くのコンビニジムで申し訳程度の筋トレを始めた。

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6540276 0 We Love みちのく 2025/04/17 12:00:00 2025/04/17 12:00:00 /media/2025/04/20250414-OYT8I50004-T.jpg?type=thumbnail

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