もう7度目で履歴書に空白、つぶやく「時間の無駄」「人生の無駄」…訪ね歩いた女性刑務所<1>

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 刑務所を見れば国民性やその国の文化水準がわかる。そう言ったのはチャップリンだ。刑務所ってどんなところ?受刑者は何を思い、どんな毎日を過ごしているのか?――女性刑務所を訪ね歩き、まずは彼女たちの話に耳を傾けてみた。(編集委員・猪熊律子)

刑務所で生まれ養護施設で育ち、子を産んで離婚…60代受刑者

午後の光が差し込む刑務所の一室。刑務官が見守る中、時に身ぶりを交え、インタビューに答える受刑中の女性(昨年11月、岐阜県の笠松刑務所で)=池谷美帆撮影
午後の光が差し込む刑務所の一室。刑務官が見守る中、時に身ぶりを交え、インタビューに答える受刑中の女性(昨年11月、岐阜県の笠松刑務所で)=池谷美帆撮影

 刑務所に入ったのはこれで7回目。今回の罪名は覚醒剤取締法違反と詐欺と窃盗と放火で、刑期は5年です。

 借金をしていた知り合いから「あの店に火を付けたら借金を帳消しにしてやる」と言われて。その店も承知していて保険金目的だ、と聞かされたけど、捕まった後、その店は何も知らなかったことがわかりました。

 火を付けに車で行くのに、別の車のナンバープレートを盗み、ガソリンは、他人のクレジットカードを使って入れました。

 覚醒剤で気持ちが大きくなってしまった。覚醒剤を使っていなかったら、こんな大きな事件は起こさなかったと思います。

 クスリを最初に使ったのは30歳近い頃です。経営していたスナックで、雇っていた女の子が「痩せる」というので使い始めました。痩せるし、イライラした気分が落ち着くんですよ。

 自分のお金で買ったクスリを自分の体に入れるだけ。人を傷つけるわけでもないから、罪の意識もありません。注射は10日にいっぺんほど。毎日ではないので、「いつでもやめられる」という気持ちがありました。

 ばれて刑務所に入った後は、4年ごとぐらいに刑務所に行っていました。北海道から関西まで、いろんなところに行きましたね。

 私、刑務所で生まれて、乳児院に1年いた後、18歳まで児童養護施設で育ったんです。親きょうだいとの付き合いはありません。20歳の頃に結婚して子供が2人生まれたけど、覚醒剤のせいで離婚されました。子供?会いたい。いつも会いたいと思うけど、こんな私に会わない方がいいかなと思います。

 仕事は、高校の後はだいたい水商売。刑務所から出た後は、友達のつてを頼ってスナックで働いたり、喫茶店でウェートレスをしたり。まともに働こうとすると、刑務所にいたとは言えないので、履歴書に空白ができる。その時は「主婦してました」とか答えたりして。

 水商売しか知らんから、また自分で商売しようと考えたけど、刑務所ばかり行ってるから資金をためる暇がない。だんだん、年齢もいってきたし。

駄目な自分見せたくなくて…友達から遠ざかるうち、誰もいなくなった

「大切な友達をいっぱいなくした」と話す(笠松刑務所で)
「大切な友達をいっぱいなくした」と話す(笠松刑務所で)

 まじめに働こうと考えたことはあるんです。刑務所で習った荷物運搬の運転技術を生かして会社に応募したけど、試験で不採用となり、心が折れてしまった。働く気がなくなった。そうなると生活保護です。

 でも、今度ばかりはどこか住み込みで働かせてくれる会社があれば、一生、働ける限り働きたい。出所したら、いつ捕まるのかと思うことなく、一人で静かに暮らしたい。

 覚醒剤はもうしません。今回したら終わり。60過ぎて何してんのという感じ。次に手を出したら死んだ方がいい。

 30年ぐらい刑務所を出たり入ったりして、気づいたらこんな年になっていた。身近にいたのは覚醒剤してる人だけ。心配してくれる友達がたくさんいたのに、駄目な自分を見せたくなくて遠ざかるうち、誰もいなくなってしまった。でも、誰も悪くない。悪いのは自分やから。

 刑務所?来るとこじゃない。人生を無駄にするところ。それが今頃になって、やっとわかりました。

 もう少し早く気づいていたら、私の人生も違ったと思う。20代、30代の10年と、50代、60代の10年は全然違う。やり直しには時間が足りない感じだけど、今度こそクスリをやめて、まじめに働きたいと思っています。

犯罪と後悔、重ねる受刑者…刑務所取材のきっかけ

 女性刑務所取材のきっかけは、10年ほど前に遡る。刑務官全員が認知症の講習を受けた施設があると知り、社会保障担当の記者として現場を見なければと思ったのが始まりだ。

 いざ、塀の内側に入ってみると驚くことばかり。それは追い追いご紹介するとして、今回、何人もの受刑者の話を聴く中で耳に残ったのが「時間の無駄」「人生の無駄」という言葉だ。

 この60代の受刑者だけではない。「覚醒剤により何年という無駄な時間を過ごしてしまった」(40代、入所4回目)、「たった1回、クスリを使ったことで無駄な人生を送っている」(30代、同3回目)、「若くもない年齢になってきて、今は覚醒剤をした時間とお金がすごくもったいないなと思う」(30代、同2回目)などなど。

 そう思いつつ、彼女たちはなぜ、犯罪を重ねてしまうのだろうか――。

全国11か所
 2020年版犯罪白書によると、19年に刑務所に入った受刑者は1万7464人。女性は1718人で、全体の約1割を占める。女性で最も多い年齢層は40歳代で3割近い。65歳以上は約2割で、この割合は約20年前の約4.5倍に増えた。女性受刑者の罪名は、窃盗(47.4%)と覚醒剤取締法違反(33%)で8割を占める。女性受刑者が入る刑務所は全国に11ある。

(2021年1月14日読売新聞夕刊<東京本社版>掲載)

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