「ささやき」の末に名店廃業、「船場吉兆」次男の十字架…2007年12月[あれから]<62>

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一連の不祥事を後悔する母、息子には感謝

佐知子さんと=湯木さん提供
佐知子さんと=湯木さん提供

 父は19年に亡くなり、兄も飲食業界を離れた。母・佐知子さんは夫亡き後、年金生活を送り、近所に住む湯木さんや友人と定期的に会うのを楽しみに、穏やかな余生を送る。

 佐知子さんは、一連の不祥事を「後悔の一言。多くの方々にご迷惑をおかけしたことに今でも申し訳なかった思いでいっぱい」と振り返る。謝罪会見は「あの報道陣のすさまじいカメラのフラッシュが恐ろしく思い出される。自業自得の出来事だが、悲しくつらい思い出です」。

 そして、「日本料理 湯木」を大阪市内で4店舗まで拡大した湯木さんについて、「私たちが志半ばでかなわなかった商いへの思いを継承してくれていることに感謝している」という。

 「食の安全に対する意識の低さがすべての問題を引き起こした」。あの不祥事を湯木さんはそう総括する。祖父の「もてなしの心」を実現するには、指揮命令系統とチェック体制が基本だ。あのときの反省を胸に、4店舗すべての料理の食材や味に自らが責任を持つ。従業員から判断を仰ぐ電話が鳴る度に、状況を細かく確認し、指示を出す。

料理の盛りつけをする湯木尚二さん(9月17日、大阪市北区で)=須藤菜々子撮影
料理の盛りつけをする湯木尚二さん(9月17日、大阪市北区で)=須藤菜々子撮影

 きょうも客の顔を思い浮かべながら、好みや宴会の趣旨に合わせたメニューや器を考えて、一品ずつ丁寧に盛りつけていく。室内に飾る花や掛け軸も大切だ。失敗を経験して、またこの道に戻ってきた。「お客様をもてなして喜びや感動を与える。この仕事が僕の天職です」。その確信がある。

  おしだ・けんた  2017年に入社し、23年9月から東京社会部。佐知子さんは対面取材がかなわず、コメントをもらった。今も続く苦悩を知り、報道する側の責任の重みと、当事者の痛みを想像する大切さを改めて痛感した。31歳。

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