日本人に根付く温泉文化、「文化遺産」としてユネスコに提案へ
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古くから全国各地で親しまれる温泉。政府は温泉利用を「社会的慣習」と捉え、「温泉文化」として国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産候補に提案するという。なぜ「文化」と評価されたのか。
日本書紀に記述、江戸時代には番付も
そもそも温泉とは何か。実は法律上の定義がある。温泉法では、〈1〉地中から湧き出る温水、鉱水、水蒸気などのガス〈2〉源泉から採取される温度が25度以上か、硫黄などの物質が一定量含まれる――の双方を満たしたものが温泉に該当する。
環境省の2023年度の調査によると、源泉は全国で2万7920か所。宿泊施設がある温泉地は2857か所で、23年度の延べ宿泊者数は1億2070万人に上る。
温泉がこれだけ身近なのは「活火山などの熱源が豊富で降水量が多く地下水に恵まれている」という日本固有の地理的条件が関係している。自然に湧出する温泉も多く、古くから日本人の暮らしと結びついてきた。
奈良時代に
平安時代以降は、歌集や物語に温泉が登場し、貴族や僧侶の日記にも訪問が記されている。さらに、江戸時代には、温泉地に長期滞在して健康回復を図る「湯治」が大衆化。効能に基づき温泉地を格付けした「温泉番付」も刊行された。
近代になると、観光としての色合いも強くなった。20世紀初頭まで農閑期の骨休めや湯治が中心だったが、第1次世界大戦に伴う好況を機に都市部に近い温泉地で開発が進み、共同浴場から宿泊施設の内湯への移行も進んだ。
温泉利用の広まりとともに、日本ならではの入浴様式、作法も確立された。最大の特徴は「着衣なしで大人数が一緒に入る」点で、混浴の習慣も一部で残る。ほとんどが41度程度の湯につかる「温浴」で、湯に天然の泥を加える「泥湯」や、砂に体をうずめて入浴する「砂湯」など地域の特性を取り入れたユニークなスタイルもある。高温、強酸性の草津温泉(群馬県)では、温泉成分を薄めずに利用しようと、加水せずに湯をかきまぜて温度を下げる「湯もみ」が伝統的に行われている。
近年は温泉を地域振興につなげる取り組みが盛んだ。源泉数全国トップの大分県は2012年に「おんせん県」の商標登録を出願。温泉が有名な他県への説明に追われ、「おんせん県おおいた」とすることで決着した。
群馬県では18年、無形文化遺産登録を目指す県議の研究会が発足。山本一太知事は「登録を応援する知事の会」設立を働きかけ、事務局長として政府への要望活動の先頭に立った。
昨年11月の文化審議会は「入浴で心を癒やし、効能で体の癒やしを得てきた」として「日本人に根付いている社会的慣習」と評価。「神楽」に続く提案候補に選んだ。過去の登録は文化財保護法で国が保護しているものが多く、温泉文化は13年に登録された「和食」と並び異例だが、順調に進めば30年12月頃にユネスコが審議する見込みだ。
一方、文化審議会は答申で「審議までの期間を生かし、内容についてより幅広い層と共有していくことが期待される」と指摘。「登録を応援する知事の会」会長の平井伸治・鳥取県知事は昨年12月の会合で「大きな宿題が出た。海外に向けても発信していく」と述べ、課題解決に意欲を示した。



























