彫刻家が生んだ「せんとくん」、自信作は「仏教を冒涜」と炎上して…人格宿ったような着ぐるみが転換点に

スクラップ機能は読者会員限定です
(記事を保存)

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 仏様を思わせるような丸みを帯びたフォルム。頭にはシカの角。一度目にすると忘れられないデザインは、他の「ゆるキャラ」とは一線を画す。

今も奈良県の公式マスコットキャラクターとして活躍する「せんとくん」=県提供
今も奈良県の公式マスコットキャラクターとして活躍する「せんとくん」=県提供

 そのキャラクター「せんとくん」は、2007年に生まれた。平城京に遷都して1300年の節目を記念したイベントの公式キャラクターとしてデザインされた。制作したのは、彫刻家の籔内佐斗司さん(72)=当時53歳=。「みんなに愛されるキャラクターになる」。自信と願いを持っていた。

 「仏教を冒涜している」。08年2月にデザインが発表されると、猛烈な批判にさらされた。白紙撤回を求める意見まで出始め、反対する団体が別のキャラクターを作り、騒動はさらに大きくなる。しかし、この騒動を経て、せんとくんの人気は揺るぎないものになっていく。(大阪社会部 前川和弘)

「冒涜だ」一転「かわいい」 

 「炎上」と言えるだろう。「気持ちが悪い」「奈良がバカにされている」。姿の見えない人からの容赦ない批判が殺到する自身のウェブサイトを前にしても、「せんとくん」の生みの親、 籔内佐斗司やぶうちさとし さん(72)は、不思議と落ち着いていた。

 良くも悪くも一見するだけで多くの人の心を揺さぶる、このキャラクターは、どのように生まれたのだろうか。

奈良県のアンテナショップの店頭に立つせんとくんの肩に手を置く籔内佐斗司さん(1月16日、東京都港区で)=前川和弘撮影
奈良県のアンテナショップの店頭に立つせんとくんの肩に手を置く籔内佐斗司さん(1月16日、東京都港区で)=前川和弘撮影

 籔内さんは彫刻家だ。日本三大妖怪の一つとも言われる「 酒呑童子しゅてんどうじ 」、親孝行の鬼として伝わる「茨木童子」……。畏れられつつも愛される、日本人にとって身近な「童子」という存在を表現した作品の数々が代表作だった。

 2007年1月、3年後に奈良県内で開かれる「平城遷都1300年祭」の公式キャラクターの制作依頼が舞い込んだ。「ひと目で奈良とわかるものにしたい」。すぐに「 鹿坊ろくぼう 」が頭に浮かんだ。「鹿坊」は童子シリーズの一つで、童子の頭にシカの角が生えている。シカは神の使いとされ、釈迦の前世の物語には、シカとなって現れる話がある。これに着想を得て生み出した。

籔内さんが県などに寄贈した募金箱の上に立つ「鹿坊」
籔内さんが県などに寄贈した募金箱の上に立つ「鹿坊」

 「鹿坊」に、より親しみやすさを加えた新しいキャラクターを造形するのに時間はかからなかった。「愛してもらえるものができた」

 キャラクター選考には、著名な現代美術家の作品など21点が集まった。07年3月の選考会。「かわいらしいものが良い」「古都らしいデザインを」……。選考委員の間で意見は分かれ、1点に絞り込む議論は難航した。

西川りゅうじんさん
西川りゅうじんさん

 当時は「ゆるキャラ」が競い合うように乱立していた時期。選考委員のマーケティングコンサルタント、西川りゅうじんさん(65)は、異彩を放つ籔内さんのデザインに「ひと味違いキャラが立っている」と一目でひかれた。3時間以上に及ぶ議論の末、ついに公式キャラクターが決まった。

 発表は08年2月。反響は、想定を大きく超えた。

関連記事
カンボジアで父母ら6人失った少女、日本で手に入れた家族「でも幸せと叫べない自分がいる」…1975年4月[あれから]<67>

1

2

3

4

人気連載「あれから」が待望の書籍化! 詳しくはこちら
スクラップ機能は読者会員限定です
(記事を保存)

使い方
速報ニュースを読む 「社会」の最新記事一覧
注目ニュースランキングをみる
記事に関する報告
7850726 0 社会 2026/04/12 05:00:00 2026/04/13 13:20:28 2026/04/13 13:20:28 /media/2026/04/20260411-GYT1I00283-T.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

おすすめ特集・連載

読売新聞購読申し込みバナー
プリファードソース

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)