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我が家の「娘たち」を紹介します。「アーニャ」(2歳)と「ベス」(1歳)、いずれもロシア原産のサイベリアンという品種のメス猫です。最初に迎えたのがアーニャですが、妻(元テレビ東京アナウンサーの茅原ますみさん)が見た不思議な夢がきっかけでした。
妻が夢で見た猫実在!?

元々妻は猫が大好き。でも3人の子育てに忙しく、かわいがっていたペットを失うつらさも耐えがたい。なので、猫への思いは封印していました。
そんな中、出会いは突然でした。2021年3月、白い猫が顔の真ん前で「ニャー!」と鳴く夢を見たという妻。まるで枕元に猫がいて、猫の息づかいまで聞こえるようなリアルさに驚き、目覚めたそうです。
それから数日後、妻は友人と食事をして、舞台を見に行くまでにちょっと時間があったので、近くのペットショップに立ち寄りました。彼女は、ペットショップに好んで入店することはありません。なぜなら、「お店にいる犬や猫たち、全てを連れて帰りたくなっちゃうから」。
しかし、導かれるように入店すると「ニャー!」と聞き覚えのある高音の鳴き声。夢に出てきた白い猫が、店に入ってすぐ右側のケージにいたのです。生後2か月のサイベリアンのメス猫でした。
妻がペットショップの店員さんに夢の話をすると、「そういうことはよくありますよ」とのこと。この猫がどんな種類なのか。オスかメスか。そんなことは関係なく「この子と暮らさなきゃいけない」という思いに駆られた妻は、子猫の写真を家族LINEに送ってきました。
「いいね」。普段は無反応な長男が、真っ先に返信しました。なんと子猫の誕生日は、長男と同じ1月20日。今思うと、見えない
さらに、誰にでも「ニャー!」とアピールしているのかと思って妻が観察していると、そうでもないのです。ほかのお客さんのことは、知らん顔。でも、仕事を終えた次男が様子を見に店舗を訪れたら、「ニャー!」と鳴いたそうです。
息子たちも乗り気な一方、家で留守番をしていた僕は急な展開に猛反対。2019年にステージ4の悪性リンパ腫と診断され、闘病生活を送った僕ですが、「猫は僕が死んでからにしてくれ」と返信したほどです。なぜここまで反対したかと言うと、先代の飼い猫「銀ちゃん」の存在が――。
先代との別れ 尾引く

前回、妻や息子たちがサイベリアンのメス猫「アーニャ」(2歳)を飼おうとした際、僕は猛反対したとお話ししました。その理由は、約20年前まで飼っていたアメリカンショートヘアのメス猫「銀・アブリザーちゃん(銀ちゃん)」にあります。
銀ちゃんは1987年、当時交際していた妻にねだられ、僕の初ボーナスで買いました。その後結婚し、銀ちゃんとも一緒に暮らすようになったものの、僕をかんだり、引っかいたり、猫パンチしたり……。それはそれは孤高で凶暴な猫でした。僕の中で猫といえば、サザエさん一家の愛猫としておなじみのタマ。でも、銀ちゃんは穏やかなタマとは正反対で、「おいおい、僕が買ったのに」と嘆きたくなるほどでした。
「嫌われている飼い主を取り上げたことはない」。そう出版社に面白がられ、僕と銀ちゃんの不仲ぶりは著名人のペットを紹介する週刊誌の連載にも掲載されました。通常は飼い主とペットの仲むつまじい写真が紙面を飾りますが、僕の場合は、僕が銀ちゃんに襲われているような写真でした。
そんな銀ちゃんも病には勝てず、14歳で死んでしまいました。すると、家族の中で最も悲しんだのが僕だったのです。学校の先生が、不良生徒が卒業する時に泣くのと同じ心境かもしれません。自分にとっての好敵手、そして気になっていた存在がいなくなるのは、やはり寂しいものです。
銀ちゃんがいなくなり、息子たちはまた猫を欲しがりました。ペットを失うつらさに参っていた僕は、それを拒否。なので、亀を飼いました。亀なら長生きしますから(今も元気です)。
銀ちゃんとの日々ですっかり「猫=引っかく」というイメージが定着した僕。我が家にやってきた生後2か月のアーニャと対面した時、「引っかかない?」と次男に尋ねました。でも、あまりにも小さくてフワフワしたこの子猫が凶暴でないことは誰が見ても明白で、気付けば「かわいいなぁ」と目を細めていました。
こうして家族の一員になったアーニャ。本名はアナスタシアです。サイベリアンはロシア原産であることから、ロシア最後の皇帝ニコライ2世の娘、アナスタシアに由来します。彼女には処刑を免れたという生存説があるので「どんなことがあっても生きろ」という思いも込められています。
その後、アーニャの「妹」としてサイベリアンのメス猫「ベス」(1歳)を迎えました。アーニャもベスも気性は荒くなく、一安心。愛猫を失った時、またペットロスになるのでは――。そう思わなくもないですが、考えても仕方がないこと。今は、一緒にいる時間を大切にすることに注力するのみです。
脱走? 元日8時間捜索

サイベリアンのメス猫「アーニャ」(2歳)の後に迎えたのが、同じ猫種のメス猫「ベス」(1歳)。アーニャに遊び相手がいるほうが、運動不足を防げると考えたのです。遊び相手がいることの利点は、3人の息子を育てた実体験からも分かっていました。
ベスの正式な名前は「エリザベス」。皆さんご存じの通り、2022年に亡くなった英国のエリザベス女王は70年もの長い間、在位しました。「女王のように長く元気でいてほしい」という願いを込めました。
アーニャは賢くて気が強い。一方、ベスはマイペースでおてんば。同じ猫種でも性格が異なります。そんなベスの性格を象徴するような「事件」が、2023年の元日に起こりました。
我が家では、愛猫たちはリビングで過ごしています。しかし、午前8時過ぎ、気付くとベスの姿が見当たらない。リビングに設置したペットの見守りカメラを確認すると、部屋の扉をきちんと閉めなかった僕、そこから出ていくベスが録画されていました。
家中を探しましたが、ベスは見つかりません。妻が散歩に出かけた際、玄関の扉から屋外に? 最悪の事態も頭をよぎりました。
その日は妻と大切な先輩に会いに行く予定でしたが、僕は出かけず、ベスの捜索を続けました。自業自得です。
近くに住む、猫の生態に詳しい友人も駆けつけてくれました。友人によると「つい名前を叫びたくなるが、大きな声や物音がすると余計に隠れてしまう」とのこと。しまった……。僕はフライパンをカンカン鳴らして「ベスー!」と連呼してしまっていたのです。
妻も、出先で気が気ではなかったようです。家の中や玄関の外の見守りカメラに何か動くものが映ったらスマートフォンに通知されるように設定したものの、通知されるのはウロウロする僕の姿ばかりでがっかりしたとか……。
夕方に妻が帰宅して捜索に加わると、妻が次男の部屋でベスを発見! 薄暗い部屋の中でフワフワと尻尾を揺らし、「私、何かしましたか?」と涼しい顔。どうやらその部屋の押し入れで寝ていたようです。僕は
8時間以上に及ぶ脱走事件は解決し、ようやく明るい気持ちで新年を迎えることができました。この出来事を僕のブログに載せると、「笠井アナ、行方不明になった愛猫との再会に涙」なんて見出しでネットニュースに。我が家の一大事が取り上げられるとは、なんて日本は平和なのか、よほど他にニュースがなかったのか。そしてベス、おてんばぶりを発揮して、変な場所に隠れるのはもうやめてね。
家族和み 会話に彩り

サイベリアンの「アーニャ」(メス、2歳)と「ベス」(メス、1歳)を飼うようになってから、様々な変化がありました。
これまで妻(元テレビ東京アナウンサーの茅原ますみさん)との会話というと、業務連絡や息子の問題になりがちでした。でも、今はアーニャがベスにグルーミング(毛づくろい)を始めれば「アーニャ、偉いね~」とベタ褒め。猫たちが高いところに登ったら「こらこら、そんなところに登っちゃって」と言いつつ、目を細める。こんな調子で、会話に彩りが生まれました。
猫に関する会話でよく出る単語は圧倒的に「かわいい」でしょう。我が家は息子が3人とも成人し、すっかりその単語からは縁遠くなっていました。夫婦の雰囲気がギスギスした時も、2匹のしぐさを見て「かわいい」と言えば、あっという間に和みます。三男もそう。どんなに機嫌が悪くても、2匹の愛らしさがイライラを緩和してくれるようです。
最近、次男は一人暮らしを始めました。自由に楽しくやっているのかと思いきや「アーニャとベスがいないのが寂しい」と。確かに疲れて帰ってきた時、僕もどれだけ2匹のぬくもりに癒やされているか、言い表せません。それで、両親ではなく猫に会いに時折我が家にやって来るので、2匹の求心力は偉大です。
小さいものに対する愛情もより深くなりました。例えばヨチヨチ歩きの赤ちゃんを見ると、つい声をかけたくなっちゃう。自分が年齢を重ねたせいもあるかもしれませんが……。
猫のテレビ番組への出演、雑誌の取材など、仕事の幅が広がったことも愛猫のおかげでしょう。フジテレビのアナウンサー時代は、自分の話をする機会はあまりありませんでした。
こんなにも喜ばしい変化があるなんて、猫ってすごい! これまでは息子たちの学校行事や成長に喜びを感じていました。でも彼らは成人し、今後どう楽しみを見つけようかという時、老後の不安や病気にばかり関心が向くのは悲しすぎる。そんな中、愛猫がささやかな幸せを運んでくれたのです。
僕はちょっとアバウトな性格です。夜にあげた餌が翌朝も残っていると「まだ食べるだろう」と、そのままにしちゃう。すると「『昨日のご飯を食べなさい』と言われたら、あなたはどう思うの?」と妻に怒られます。妻によると「猫はしゃべれないから、気遣ってあげるべきだ」と。それもその通り。ご飯を食べなかった時、それは具合が悪いからなのか、その餌が嫌いだからなのか、見極めないといけませんから。
2匹と楽しく長く暮らせるよう、今後も愛情深く接していきたいです。妻の指導を受けながら、ですかね。
(このコラムは、読売新聞で2023年12月に掲載されたものをまとめて再掲載しています。)
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