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僕の「相方」を紹介します。ジャックラッセルテリアの「のすけ」(オス)。2018年1月生まれで、今年6歳になりました。
犬を飼うのは、のすけが初めて。山口県の実家で金魚、亀、うずらを飼っていたことはありますが、愛情を注ぐ対象ではなく「生き物」という感覚でした。そして、犬に対してはなぜか恐怖心がありました。下積み時代、公園で相方のシュウペイと漫才の練習中に犬が近寄ってくると、集中できなくなるほどでした。

当時交際中だった妻が犬好きで、「飼いたい」と目をつけたのが、ジャックラッセルテリアでした。ユーチューブか何かで見て、力強く走り回る姿に一目ぼれしたようです。
一方、犬の知識ゼロな僕は「ジャックラッセルテリア……?」となるわけです。そして調べると、「イギリス原産の小型犬。猟犬としての能力に優れ、活発で好奇心旺盛」とのこと。「運動不足になると、いたずらをすることがある。初心者には飼いにくい」という一面もあるようでした。
それから犬の飼い方や習性に関する記事を読むなどして理解を深め、覚悟を決めてブリーダーさんを訪ねました。
疲れ忘れる恋の魔力
生後2、3か月の子犬10匹ぐらいが無邪気に戯れる姿に、自然と目を細めてしまう僕。そして隅っこでおとなしくしていた子犬を選び、抱き上げると、僕の顔や口をペロペロなめました。犬と縁遠かった僕にとっては、これが犬とのファーストキス。それでハートを撃ち抜かれちゃったのです。言うまでもなく、この子犬がのすけです。
のすけという名前は、人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の主人公、野原しんのすけから妻が命名しました。彼のように明るく、元気に育ってほしいという願いを込めました。その時、「ビッグサンダー号3(スリー)」と呼んでいた僕の愛車(といっても自転車)が壊れて、「『○○号』と名付けたい」と提案したら、「乗り物じゃない!」と妻に却下されました。
この願いどおり、いや、願い以上に元気に育ったのすけ。活発というジャックラッセルテリアの性格は本当でした。初対面の時に隅っこでおとなしくしていたのすけは、どこへやら? 朝晩たっぷり散歩をしても、疲れることを知りません。おもちゃも、いくつ壊したことでしょう。
だけど、どんなに疲れていても愛犬の散歩は全く嫌な時間ではありません。これが恋の魔力なのです。
大型犬に果敢「遊ぼう」
前回、のすけは、好奇心旺盛で活発な犬種とされるジャックラッセルテリアであるとお話ししました。
だから、のすけはドッグランで走り回るのが大好き。小型犬ですが、あまりにも運動量が多いため大型犬用のエリアで遊ばせることもあります。
そして、のすけは大型犬に対しても臆せず「遊ぼう、友だちになろう」と猛アピールします。たまに初対面の犬を警戒する子がいますが、のすけはおかまいなし。社交的でコミュニケーション能力が高い、いや、高すぎるのです。
それでも、たまに遊び相手になった犬のほうが足が速かったり、プロレス遊びが得意だったりすることがあります。すると、相手が疲れて休んだ隙を狙って戦いを挑むのすけ。「それはルール違反やろ」と、僕が叱るのがお決まりです。

ドッグランは学びの場でもあります。ある時、のすけが一緒に遊んでいた大型犬の水を飲んでしまいました。そしたら大型犬がのすけの首を甘がみして、「それはダメだ」と教えたのです。それ以降、ほかの犬の水や食べ物には絶対に手を出さず、ドッグランでその大型犬に会うと「先輩、こんにちは!」と言わんばかりに自分から近づいて後をついて回っています。「お前、舎弟か」とツッコミを入れたくなりますが、犬が社会性を学ぶ様子は興味深いです。
フレンドリーなのすけにも、天敵(?)がいます。神社のこま犬や、カフェの店先などに置いてある犬の置物です。見かけると一定の距離を保ち、ワンワン鳴いて大騒ぎ。「こいつ、犬だけど動かない。何なんだ」と不思議なのでしょうか。
それにしても、こま犬や犬の置物が自分の姿と同じだと認識するのは賢いと感心します。親バカ?
今年新たに判明した、のすけが警戒するものを紹介します。節分の日、親戚の子どもたちが我が家に集まり、僕が鬼の役を務めました。子どもたちを驚かせようとお面や全身タイツを準備し、本格的に鬼の格好をする僕。僕の熱演に子どもたちは号泣し、のすけも「不審者だ!」とほえまくります。普段、家族以外の人にもほえることなんかないのに、です。
豆をぶつけられ、僕が「参った~」と床に倒れると、のすけが近寄ってきました。クンクン……。匂いをかぎ、飼い主だと判明。「なんだ、お前か」と興味を失い、去っていきました。
子どもたちを守ろうと戦う姿は勇敢で、見直しました。ただ、善人のふりをして家に入ってくる悪いやつには完全にだまされるでしょう。残念ながら、本質は見抜けない。やはりフレンドリーすぎて、番犬には向いていないのです。
CM主演 発表会も堂々
2018年春頃にのすけを迎えた時、僕は芸人としては鳴かず飛ばず。酒屋やウーバーイーツの配達員、葬儀屋の手伝いなどのアルバイトをしながら舞台に立ち、当時交際中だった妻も働いていました。先が見えず、しんどかったです。
30代半ばを迎え、結婚して、のすけも連れて実家がある山口県に帰ることを考え始めました。同時に「どうせやめるなら、とことんお笑いと向き合ってからにしよう」と気持ちを新たにしたことも確かです。
19年元日、若手芸人がネタを競うテレビ番組の企画で優勝、同年12月には「M―1グランプリ」で第3位――。環境は激変し、テレビや舞台の仕事に追われる毎日に。のすけは活発で運動量が多い犬種ですが、僕を取り巻く空気も引っかき回してくれたと感謝しています。僕はあまり占いは信じないけど、愛犬に関しては「パワースポット犬」だと確信しています。

そして、21年にはのすけと仕事をする機会に恵まれました。ドッグフードのCM出演です。ネタに困った際、ぺこぱのユーチューブチャンネルにのすけを登場させていたら、ペット用食品販売会社の関係者の目に留まったようです。
CMの主役はのすけ。僕らぺこぱは、のすけの「バーター」出演です。のすけさまさま! 相方のシュウペイも「『のすけさん』と敬う姿勢で接しないと」と気を引き締めて(?)いました。のすけは人見知りしないので、撮影は順調に進みました。撮影中はたくさん餌をもらい、終始ご機嫌。みんなに「かわいい、かわいい」と言われて、ますますご機嫌。帰り道は疲れて爆睡していたけれど、いい思い出になりました。
CMでは、ドッグフードを夢中で食べるのすけに、ツッコミを入れたり気を引こうとしたりするものの、相手にされない僕の姿などが描かれていました。初めて完成したCMを見た時、感無量で泣きそうになった僕。家でCMが流れた際は、僕やシュウペイは全く目に入らず、「この犬、かわいすぎるだろ」とほれぼれしましたね(笑)。
愛犬と共に、CM発表会にも臨みました。大勢の報道陣に囲まれても、行儀よく
発表会では、ぺこぱの未来を2択で占いました。餌を2か所に置き、のすけがどちらを選ぶかで占うのです。「来年シュウペイは結婚できるのか」という質問で、のすけは「○(結婚できる)」を選択。会場は拍手に包まれました。
しかし、シュウペイは今も独身です。パワースポット犬がすてきなご縁を運んでくるのは、いつになるやら。
いつか娘の相談相手に?
2022年秋、第1子の長女が生まれました。気になるのは、のすけとの相性です。
娘が退院してのすけと初対面をする時、僕は仕事で不在でした。だから、家族にその様子を動画に収めてもらいました。のすけは「何だろう?」というように娘の匂いを嗅ぎましたが、不思議そうにしたのは初対面の一瞬だけ。それ以降は娘がおなかいっぱいになって寝ると、その横でのすけも寝るのです。のすけは、すぐに彼女を家族として認識しているようでした。

のすけなりに、育児に「参加」もしてくれます。寝室で寝ていた娘が起きて、ぐずり始めると真っ先に気付くのがのすけです。寝室のドアに向かって鳴いて、僕と妻に知らせてくれます。
そうは言っても、のすけにとって娘は格下のようです。のすけの中では、我が家の序列は〈1〉妻〈2〉のすけ〈3〉僕と娘。いたずらをして妻に怒られると、よく僕の後ろに隠れます。そうすると、僕が妻に怒られているような図に……。ちょっと不本意ですが、「つらいことがあったら受け止めるからな、俺は味方やで」と見守っています。
娘の格下エピソードとしては、娘に卵ボーロをあげた時のことです。早く食べればいいのに、好物だから最後の1個をとっておきたいのでしょう。卵ボーロを手にしたまま、部屋の中を歩き回ります。そうすると、のすけが見逃しません。彼女が気を抜いた隙に、のすけが卵ボーロをパクリ。もちろん、娘は泣き出します。
「仕方ないな」と娘に卵ボーロを与えると、また同じことの繰り返し。食いしん坊で機敏なのすけ、マイペースな娘の攻防(?)ですが、娘にまだまだ勝ち目はありません。
そして娘が泣くと、のすけは決まって彼女に近づき、顔をなめます。「慰めているのかな。ほほえましいな」と思いきや、最近気付いたのはこれは水分補給じゃないかということ。「いつも飲んでいる水とは違う味がするな」ぐらいにしか思っていないかもしれません。
娘は、外で犬を見かけると「ワンワン」と言います。「のすけもワンワンだよ」と教えても、のすけのことは「ワンワン」とは表現しません。卵ボーロの取りあいはあるけど「のすけ=仲間、きょうだい」と認識しているのか? だとしたら、うれしいです。
思いやりの心を育てる、責任感が芽生えるなど、子どもの頃からペットを飼うことは情操教育にいいと言われています。成長した娘がのすけにだけひっそり悩みを打ち明け、涙を流す日もあるかもしれません。そして、のすけはまた彼女の顔をなめるでしょう。水分補給かもしれないけれど。
(このコラムは、読売新聞で7月、8月に掲載されたものをまとめて再掲載しています。)
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